2025年7月17日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」では、急性期一般病棟(入院料2~6)と地域包括医療病棟のいわゆる「ケアミックス(機能混在)」について議論が行われた。
厚生労働省が示したデータによれば、両病棟で受け入れている患者の傷病名、ADL、要介護度などに明確な差異は認められず、機能の境界が曖昧になりつつあることが浮き彫りとなった(図1)。
図1 急性期一般(2-6)と併設地域包括医療病棟の受け入れ疾患
この点について、委員の間ではさまざまな意見が交わされた。
一つは「役割が重なりすぎると、医療資源の適正配分が難しくなる」として、病棟機能を明確に分けるべきとする立場。
次に「救急搬送患者の受け入れや地域医療の維持には、ケアミックス体制が有効である」として、現状を肯定的に評価する立場。
そして、「制度や地域特性によって最適解は異なり、今は過渡期として柔軟に対応すべき」とする立場もあった。
つまり、ケアミックスの是非は単純に白黒で割り切れるものではなく、地域医療構想全体の中で位置づけを再検討する必要があるという認識が共有されたといえる。
また、両病棟ともに「平均在院日数21日以内」という施設基準を持つが、85歳以上の高齢患者が増えるなかで、この基準の妥当性についても見直しの議論が始まっている。
実際、85歳以上の患者では在院日数の中央値が5〜6日長くなる傾向があり、今後の高齢化を踏まえると、制度的な柔軟性が求められる段階にある(図2)。
図2 急性期一般(2-6)と地域包括医療病棟の在院日数
一方で、看護配置が共通する急性期一般2〜6と地域包括医療病棟の併設を制限する方向性も議論されており、病棟機能の再整理が次期改定の焦点の一つとなりそうだ。
さらに、地域包括医療病棟の包括評価の中で、整形外科系疾患では出来高に対して報酬が高い一方、内科系疾患(誤嚥性肺炎、脳梗塞、尿路感染症など)では報酬が相対的に低い傾向も示された。
今後は「内科症例が不利にならず、ADLや介護的支援も考慮できる評価体系」への修正が求められると考えられる。
このような変化はリハビリ分野にも大きな影響を与える。
まず、在院日数の見直しが進めば、急性期・地域包括医療病棟の双方で、綿密で精度の高い在宅との後方連携が不可欠となる。
退院支援の時点でリハビリ職種が関わり、家屋状況や家族支援体制を含めた「生活設計型リハビリテーション」を組み込むことが重要になるだろう。
単に訓練を提供するだけでなく、在宅復帰後の生活維持を見据えた介入設計力が問われる時代である。
また、内科系疾患の評価改善が進めば、誤嚥性肺炎や尿路感染症といった高齢者救急後のリハビリ需要が増加する。
リハビリ職種には、フィジカルアセスメント能力や多職種連携の調整力といった臨床横断的スキルがこれまで以上に求められる。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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