呼吸リハビリテーションは、呼吸障害を有する患者の呼吸機能を最大限に引き出し、日常生活動作(ADL)の改善を図ることを目的とする包括的なアプローチである。
その中核をなすのが「コンディショニング」と「積極的トレーニング」である。
コンディショニングとは、まず呼吸の効率を整える段階である。
口すぼめ呼吸や腹式呼吸といった呼吸トレーニングにより、換気効率を高めることが重要となる。
これにより呼吸筋群の負担を軽減し、呼吸困難感を減少させることができる。
また、排痰法や呼吸介助法を適切に実施することで、分泌物の貯留を防ぎ、感染リスクの低減にもつながる。
胸郭可動域訓練は呼吸運動の柔軟性を確保する上で不可欠であり、拘縮や胸郭の硬さを改善する役割を担う。
これらのコンディショニングは、症状の軽重に関わらず、呼吸リハビリテーションの基盤を形成するものである(図1)。

図1 呼吸リハビリテーションのコンディショニング
一方、積極的トレーニングは全身持久力や筋力の維持・向上を目的とする段階である。
筋力トレーニングや歩行トレーニングを通じて、全身の代謝効率を改善し、活動耐容能の向上を図る。
特に、低負荷から高負荷へと段階的に強度を調整することがポイントであり、呼吸状態に応じた個別化が求められる。
呼吸リハビリテーションにおいては、筋力強化そのものが呼吸筋群の機能改善に寄与するだけでなく、日常生活動作の自立にも直結する(図2)。

図2 呼吸リハビリテーションの積極的トレーニング
重症例ではまずコンディショニングが中心となり、状態の安定化を図る。
中等症から軽症に移行する過程で、徐々に積極的トレーニングの比重を高め、最終的にはADLや応用動作の拡大へとつなげる。
このように、呼吸リハビリテーションは「整える」「鍛える」「広げる」という連続的プロセスによって成り立っており、患者の病態に応じた段階的なアプローチが求められるのである。
投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。
