「パ・タ・カ」って何見てる?

昨今、通所介護においても口腔機能向上加算口腔・栄養スクリーニング加算などの加算があり、口腔機能に関して関わる重要性が高くなっている。

通所介護の現場では、集団体操の中に「パ・タ・カ」を組み込んでいる事業所さんも多いのではないだろうか。

私も「パ・パ・パ」「タ・タ・タ」「カ・カ・カ」などを現場で行ったり、その部分を評価したりすることがある。

「なぜ体操で発声を入れるのか」「何を見ているのか」。

通所介護の機能訓練指導員としては
日々の体操の中で行う「パ・タ・カ」のねらいを言語化しておく必要性はあると考える。


パ・タ・カとは何か

「オーラル・ディアドコキネシス」と呼ばれる、舌・口唇・軟口蓋などの器官の運動速度巧緻性を発音状況で評価する方法である。

その使用音が「パ・タ・カ」である。

厳密には 5 秒または 10 秒間で各音を連続発声し、1 秒あたりの回数を求める。

通所介護では、数値化ももちろん大事であるが、「言えるか否か」から苦手領域を素早く見立てることをみるという事が現実的である。


パ・タ・カを見る理由

多数ある音の中で「パ・タ・カ」を選ぶのは、摂食嚥下と直結する三つの機能を簡便に確認できるからである。

  • 「パ」口唇閉鎖が必要である。

  • 「タ」舌尖の挙上(上顎への接触)が必要である。

  • 「カ」後舌の挙上(軟口蓋付近)が必要である。

したがって、体操中のパ・タ・カで以下が把握できる。

  • 口唇閉鎖ができるか。

  • 舌尖が上方に上がるか。

  • 後舌が上方に上がるか。

さらに、この三点から食事場面で次の四点を予測できる。

  1. 口から食物・飲料をこぼさず取り込めるか(「パ」)

  2. 口を閉じて嚥下できるか(「パ」)

  3. 嚥下後に口腔内残留が生じるか(「タ」)

  4. 口腔内で食物・飲料を保持できるか(「カ」)

要は、パ・タ・カをみるということは道具なしに食支援のスクリーニングをするということである。


明日からの実践に向けて——通所介護でこう活用する

通所介護では言語聴覚士の個別評価が入っていない利用者も多い。

次の条件に該当する方は、体操にパ・タ・カを必ず入れる価値がある。

  • 75 歳以上の後期高齢者:全身筋量低下が想定される。

  • 整形外科疾患で入所し嚥下調整食を要する:摂食嚥下に問題が潜む可能性が高い。

  • 術後などで一定期間臥床を余儀なくされた:廃用に伴い筋力・口腔機能が低下しやすい。

これらに 1 項目でも当てはまれば、早期にリスクへ気づき、ST 相談につなぐ合図としてパ・タ・カを使うべきである。

体操の導入 30 秒で「パ・タ・カ」を全員で行い、個別メモに「パ△/タ○/カ×」のように簡潔に残す。

食事観察や誤嚥サインと突き合わせるだけでも、ケアの精度が上がる


本日のまとめ

  • 通所介護の体操に「パ・タ・カ」を組み込む意図は、口唇閉鎖・舌尖挙上・後舌挙上という嚥下の基礎機能を即時スクリーニングすることである。

  • 「パ」は取り込みと口唇閉鎖、「タ」は口腔残留、「カ」は口腔内保持の予測指標となる。

  • 75 歳以上/整形+嚥下調整食/臥床後の利用者では、体操の 30 秒でのチェックを習慣化し、所見があれば言語聴覚士へつなぐ。

以上、日々の体操で何気なく行っている「パ・タ・カ」を、意図を持って使い切るための整理である。

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投稿者
堀田一希


・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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