2026年度診療報酬改定で問われる認知症対応力 ~リハビリテーションの新たな役割と評価の方向性~

2026年度診療報酬改定では、回復期・地域包括ケア病棟における「認知症合併患者への対応力」が大きな焦点となる見込みである。

現状、要介護高齢者の多くが認知症を合併しており、入院を契機に認知症の進行やBPSD(行動・心理症状)の悪化を招く事例が後を絶たない。

これによりリハビリテーションが無効化し、機能回復の遅れや在宅復帰率の低下を引き起こすことが問題視されている。

つまり、身体機能の改善だけではなく、認知症を含めた包括的支援体制の構築が求められているのである。

現在、回復期・地域包括ケア病棟では約5割の患者が認知症を有していないとされるが、実際には認知機能の軽度低下やBPSDを有する患者が多く存在する。

特に「ランク4(常時介護が必要)」に分類される患者が6%も入院していることからも、リハビリ現場の対応力が追いついていない実態が浮かび上がる。

現場では依然として「身体リハビリ」中心の体制が主流であり、認知症に対する理解や介入スキルが十分に浸透していない。

このような状況を踏まえ、次期改定では認知症合併患者に対するリハビリテーションの質的向上が評価対象となる可能性が高い。

たとえば、①BPSDを踏まえた個別対応力、②認知症リハ専門職との多職種連携、③入院初期からの生活期を見据えたプランニングなどが具体的評価軸として検討されるであろう。

また、認知症対応力の高い病棟や施設を「地域包括医療・介護の中核」として位置づける動きも進むと考えられる。

リハビリ専門職にとっては、身体機能回復の枠を超えて「認知機能・行動・環境要因を踏まえたアプローチ」が必須となる。

従来のADL改善指標に加え、BPSDの軽減や生活の安定を評価できる視点が求められる。

2026年度改定は、リハビリテーションを「身体」中心から「生活と認知」中心へと再定義する転換点となるであろう。

参考文献
2025年7月24日 第1回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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