糖尿病の運動療法は、有酸素運動とレジスタンストレーニングを主体に実施するのが基本である。
特に2型糖尿病の血糖コントロールにおいて、両者を行うことが推奨されている1)。
どちらか一方または両方で、禁忌がなければ両方の運動を行う方が良い。
有酸素運動は、中等強度で週に150分かそれ以上行い、運動を行わない日が2日間以上続かないよう調整しながら実施する。
有酸素運動における中等強度とは、いわゆる嫌気性代謝閾値レベル(ATレベル)のことであり、自覚的運動強度としては旧Borg scale11~13(楽である~ややきつい)に相当する。
また運動中は、少し息が切れる程度(会話をしながら運動を続けられる程度)や、安静時の脈拍+20~30拍上がる程度といった指標も合わせて用いながら実施すると、なお安全かつ効果的に行うことができる。
有酸素運動の効果は、3日で軽減し1週間で消失するといわれている。したがって運動の頻度は、運動をしない日が2日間以上続かないようにし、さらには継続して行うことでトレーニング効果が得られる。
トレーニング効果の作用機序として、①GLUT4(GLUT;glucose transporter,糖輸送担体)含量の増加、②脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの分泌増加、③ミトコンドリア生成の増加・脂質酸化の向上、④筋線維タイプの変化や血管新生などが考えられ、これらの作用機序によってインスリン感受性の向上(インスリン抵抗性の改善)が得られる。
レジスタンストレーニングは、連続しない日程で週に2~3回行うことが勧められている1)。
トレーニングの内容としては、上半身と下半身の筋肉を含む8~10種類のトレーニングを行うのが良い(図)。
レジスタンストレーニングの作用機序として、骨格筋においてブドウ糖や脂肪酸の利用が促進されることで血糖が低下することが挙げられる。
高齢者やサルコペニア、フレイル合併症例、整形外科疾患症例などは『疲労感が強すぎない』、『痛みが出現しない』、『継続できる強度・頻度・時間・種類で実施する』などを考慮し、個別に内容を設定して運動療法を進めていくのが良いと思われる。

図 上半身・下半身のレジスタンストレーニング
参考文献
1)編・著 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024,南江堂
投稿者
井上拓也

理学療法士
循環認定理学療法士
心臓リハビリテーション指導士
3学会合同呼吸療法認定士
サルコペニア・フレイル指導士
国家資格キャリアコンサルタント
心電図検定1級
協会指定管理者(上級)
フレイル対策推進マネジャー
地域ケア会議推進リーダー
介護予防推進リーダー
mysole協会ベーシックマイスター
循環器疾患(心臓リハビリ)や代謝疾患(糖尿病)、透析リハビリ、サルコペニア・フレイルを中心に臨床を行っている。
また、心肺運動負荷試験(CPX)も相当数経験をしており、呼気ガス分析に基づく安全かつ効果のある運動処方を展開するよう常に心がけている。
定期的にセミナー講師も務め、上記の疾患およびそのフィジカルアセスメント、心電図の判読などの情報提供も行っている。
