立ち上がり時の膝関節の痛みについて

今回は立ち上がり時に生じる膝関節の痛みについてお話ししていく。

臨床で膝の痛みを訴える方は多くおられますが、同じ部位の痛みでも痛みが起こる状況は異なることがある。

起立時、屈曲・伸展時、他動運動・自動運動時、荷重時・非荷重時、階段昇降時など。

痛みがある部位がどこなのかを評価するのは当然ですが、どんな状況で痛みが起こるのか、再現性はあるのかないのかを評価することも同じくらい重要となる。

今回は起立時に起こる膝の痛みについて、私なりの考えを解説する。

まず、痛みの原因を以下の3つに分けて考えてみる。

・軟部組織の伸張ストレス
・圧迫、摩擦ストレス(インピンジメント)
・関節内圧の変化

起立時の最初のフェーズでは、膝が軽度前方へ移動し、その後離殿に伴って下腿に対して大腿骨が直立化する

この時伸張されるのは、大腿の前面組織。

大腿四頭筋、薄筋、縫工筋、腸脛靭帯辺りが伸張される。

膝の前方移動時、真っすぐ移動してくれれば良いですが、上手く起立できない方は内外側のどちらかに偏った方法で起立することが多い。

例えば、内側へ偏位した起立、いわゆるknee inの状態ですが、この時は内側広筋、縫工筋、薄筋の遠位部に伸張ストレスが加わるので、これらの筋群にスパズムがあったりすると痛みが生じる可能性がある。

また、外側でも腸脛靭帯の近位部、大腿筋膜張筋や中殿筋にも伸張ストレスが加わり、結果的に腸脛靭帯も伸張されるので、それによる痛みも可能性としては考えられる。

圧迫、摩擦ストレスはいわゆるインピンジメント。

膝では内反変形が多いですが、内反変形=痛いというわけではなく、軟骨には神経がないので、そもそも痛みを感じない。

繰り返されるストレスにより、軟骨が摩耗し、摩耗により浮遊した軟骨が滑膜を刺激することで炎症が起こったり、関節水腫を起こしたりすることで、痛みを起こしてしまう。

変形が重度だからといって必ずしも痛みを訴えるわけではない。

関節水腫にも関連しますが、関節内圧が高まっても痛みを感じる。
関節内圧が高まるというのを具体化すると、関節包で覆われた内部には関節液が満たされているということ。

軟骨の摩耗による浮遊物で関節内容積が増える、滑膜への刺激による炎症で関節液が増えることで、関節内圧が高まると、関節包が内側から伸張されてそれが侵害刺激となり、痛みを感じる。

起立時は膝関節が屈曲90°前後ですが、膝関節の角度別の関節内圧を研究した結果では、0°、30°、60°、90°で比べると、90°が最も関節内圧が高かったとされている(参考文献①)。

また、別の研究では、他動屈曲で角度に応じて緩やかに関節内圧が高まっていったとも言われている(参考文献②)。

起立時には瞬間的に膝関節屈曲角度が大きくなり、離殿から立位までは膝関節屈曲位から伸展方向への動きも伴う。

この間、関節内圧の変動があるはずなので、関節水腫があったり炎症が強い症例では、それによって痛みを伴うこともあると考える。

以上の3つ、軟部組織の伸張、インピンジメント、関節内圧で痛みが起こる理由をおさえ、症例にはどの問題が当てはまるのかを考えて介入するべきだと考える。

参考文献

1.田原 尚直 他 : 膝関節鏡視時の関節内圧測定 整形外科と災害外科 44:(1)1~3,1995.
2.C Alexander et al : Relation between flexion angle and intraarticular pressure during active and passive movement of the normal knee. J Rheumatol. 23(5):889-95. 1996.

投稿者
堀田一希

・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職する。
「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを掲げている介護施設にて、日々、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。
また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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