極超短波療法(マイクロ)について

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方が主にご勤務する整骨院において、最も頻回に行っている物理療法は、温熱療法ではないだろうか。

特に極超短波(マイクロ波)については、ホットパックと並んで最も用いられている治療法の一つだと思われる。

極超短波は、300~3000MHzの周波数を持つ電磁波をいい、その生理的作用は温熱効果、血液供給量の増大、鎮痛作用等である。

本邦の医療現場においては、主に2450MHzの周波数のものが用いられている。

温熱作用としては、ホットパックや赤外線といった温熱療法が皮膚温を上昇させるのに対し、極超短波は深部温熱の効果があり、その深さは皮下2~3cmの筋肉層である。

この理由として、極超短波を生体に照射した際、そのエネルギーの組織吸収率は含水量の多い組織(臓器)で高いことから、筋肉を中心とした臓器で温熱効果が得られるためである。

また、もう1つの理由として、極超短波は光に似た性質を有し、反射・屈折・透過・吸収作用がある。このうち屈折は、筋膜などの組織密度の高い部分で起こるため、その領域付近での温度上昇が起こりやすいのである。

これらの理由により、皮下の深部2~3cmの温度上昇が起こり、その上昇は2~5℃程度とされている。

治療適応としては、

①慢性炎症性の関節疾患:変形性関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチ etc
②亜急性期以降の外傷:打撲、捻挫、脱臼 etc
③亜急性期以降の筋・筋膜性疾患:腰痛、腱鞘炎 etc
④拘縮
⑤筋スパズム
⑥痙縮

などである。

一方、禁忌として

①金属(特に体内金属固定)ペースメーカー
②急性炎症疾患
③眼球、男性生殖器、乏血、うっ血、浮腫
④感覚障害、⑤出血部位、出血の危険性のある部位
⑥悪性腫瘍
⑦火傷
⑧成長期の骨端部
⑨妊娠中の腹部(子宮部)

などがある。

極超短波を実施する上での注意事項は、

①照射導子(アンテナ)は皮膚と接触しない(5~20cm離す)
②照射部位の発汗や湿布などを添付していないか確認する
③顔面近くを照射する場合には眼部保護眼鏡を使用する
④患部に垂直に照射する
⑤衣服は原則として脱ぐ(皮膚に熱が収束するため)

などがある。

上記と重複するが、臨床にて特に留意しておきたいこととして、変形性関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチ等で炎症の活動期にあるときは“不適応”になることである。

すなわち、極超短波をルーティーンで実施するのではなく、実施する前に必ず患部を評価し炎症期でないことを確認してから照射することが望ましいであろう。

また、全人工膝関節置換術(TKA)、全人工股関節置換術(THA)および人工骨頭置換術(BHA)等に代表されるような体内金属が挿入されている部位への照射は、極超短波による熱の収束が熱傷の原因になる。

さらに、金属に向かって極超短波を照射すると、反射されてアンテナを損傷することがあるので注意が必要である。

言うまでもないが、これに対するリスク回避策としては極超短波の特徴を熟知しておくことと、極超短波を実施する前の患者の情報収集に限ると考えられる。

以上、簡単にではあるが極超短波の特性や物理エネルギーの作用、適応・禁忌・注意事項についてまとめさせていただいた。

極超短波は物理機器の中でも最も用いられているものであるがゆえに、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生は、本投稿の内容を十分に理解した上で患者に対して安全かつ効果的に実施していただきたい。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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