近年、リハビリテーションの臨床現場において、栄養状態の重要性が改めて注目されています。「リハビリテーション栄養(以下、リハ栄養)」という言葉も、リハビリ職にとって身近なものになってきました。
リハ栄養の考え方では、「運動」と「栄養」を切り離して考えないことが重要です。
どれだけ適切な運動療法を実施しても、その患者・利用者が必要なエネルギーやたんぱく質を十分に摂取できていなければ、期待した効果が得られない可能性があります。
例えば、著明にやせている高齢者に対して、筋力低下があるからという理由だけで積極的な筋力トレーニングを行うことが適切とは限りません。
まず確認したいのは、
- 最近、体重が減っていないか
- 食事量が低下していないか
- 食事を残すことが増えていないか
- 咀嚼や嚥下に問題はないか
- 疾患や炎症によって消耗が進んでいないか
- そもそも運動に必要なエネルギーを確保できているか
といった点です。
低栄養が疑われる場合、単純に「運動量を増やせば筋力がつく」と考えるのは危険です。
十分な栄養摂取がない状態で運動負荷だけを高めれば、身体機能の改善につながらないばかりか、疲労の増大や体重減少を招く可能性もあります。
つまりリハビリ職には、「この人は運動できるか」だけでなく、「この運動量を支えられる栄養状態にあるか」という視点が必要なのです。

一方、肥満がある患者・利用者についても同様です。
単に「体重を減らしましょう」と指導するのではなく、普段の食事内容や間食、飲料、活動量、生活リズムなどを確認したうえで、運動療法と食生活の改善を組み合わせていく必要があります。
もちろん、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士だけで栄養管理を完結させることはできません。
医師による疾患管理、管理栄養士による栄養評価・栄養指導、看護師による全身状態や摂取状況の把握、言語聴覚士による嚥下機能の評価、介護職や家族から得られる日常の食事状況など、多職種からの情報を組み合わせることが重要です。
リハビリ職に求められるのは、管理栄養士の代わりになることではありません。
リハビリを実施する立場として栄養状態の異変に気づき、運動療法との関係を考え、必要な職種につなぐことです。
体重減少、食事摂取量の低下、著明なやせ、浮腫、疲労感、筋力低下などは、日々患者・利用者の身体に触れているリハビリ職だからこそ気づけることがあります。
リハ栄養とは、栄養だけを見るものでも、運動だけを見るものでもありません。
患者・利用者の機能・活動・参加を最大限に高めるために、「運動できる身体をどうつくるか」「その運動を身体が支えられる状態にあるか」まで考えることが重要です。
リハビリテーションの効果を高めるためにも、栄養状態は血圧や脈拍、呼吸状態などと同じように、日々の臨床で意識しておきたい重要な情報の一つと言えるでしょう。
投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

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