老化とは、「成熟期以降、加齢とともに各臓器の機能、あるいはそれらを統合する機能が低下し、個体の恒常性を維持することが困難となり、最終的には死に至る過程」をいう。
この過程で生じるさまざまな変化を老化現象といい、各種器官・臓器における機能低下が含まれる。
老化を理解する上で重要なのは、成熟期以降に生じる各臓器の機能低下によって生理機能が徐々に低下し、恒常性の維持が困難になるという点である。
恒常性(ホメオスタシス)とは、外部環境が変化した場合でも、生体が内部環境を一定の範囲に保とうとする働きのことである。
これは、生体を安定した状態に保つための極めて重要な生理学的制御機構である。
ホメオスタシスの代表的なものとして、筋タンパク質の代謝、呼吸・循環機能の代償、酸塩基平衡、体温調節、ホルモン分泌調節などが挙げられる。
例えば、インスリンによる血糖調節や、骨形成・骨吸収による骨代謝の調節なども、ホメオスタシスの一つである。
加齢によってこのような調節機能が低下すると、身体は外部からの負荷や環境変化に対応しにくくなる。
つまり、ホメオスタシスの低下・破綻は、身体的予備能力の低下につながると考えることができる。
さらに老化では、筋肉量の減少、脂肪量の増加、骨密度の低下といった身体組成の変化が生じる。
加えて、活動量や食事摂取量の低下によるエネルギー産生・消費の不均衡や、神経細胞の減少などの神経変性も生じやすくなる。
その結果、若年者であれば問題にならない程度のストレスや環境変化であっても、身体機能が大きく低下することがある。
感染症、脱水、入院、安静などをきっかけに、一気にADLが低下する高齢者がいるのも、このような予備能力の低下が背景にある。
このように、老化に伴う複数の機能低下を背景として、高齢者ではさまざまな病気や障害が生じやすくなる。
高齢者に多く認められる特徴的な症候や障害のまとまりを、老年症候群という。
代表的な老年症候群として、誤嚥、歩行障害・転倒、認知機能低下・せん妄、排尿障害、睡眠障害、食欲不振・低栄養、褥瘡などが挙げられる。

老年症候群の特徴は、一つの原因だけで生じるのではなく、身体機能、認知機能、栄養状態、生活環境など複数の要因が相互に影響していることである。
そのため、高齢者に対するリハビリテーションでは、一つの疾患や障害だけを見るのではなく、全身状態・生活機能・環境を含めて評価する視点が重要となる。
以上、老化の定義、ホメオスタシスの低下、身体的予備能力の低下、老年症候群について概説した。
高齢者には、老化によって生じる高齢者特有の身体的・精神的・社会的な問題が存在する。
これらの特徴を十分に理解した上で、リハビリ職種として高齢者の臨床に向き合うことが重要である。
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投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

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