起業の第一歩は「事業ドメイン」を決めること―誰に・何を・どうやって提供するのか

起業を考えるとき、最初に悩むのは「どのような事業を行うのか」ということである。

事業内容を検討するうえで、まず整理しておきたいのが「事業ドメイン」である。

事業ドメインとは、簡単に言えば「自社がどの領域で事業を行うのか」という事業の範囲を示すものである。

事業ドメインを考える際には、主に次の3つの視点から整理すると分かりやすい。

提供したい人=顧客軸

何を提供したいか=機能軸

どのように提供するか=製品・技術軸

つまり、

「誰に」

「何を」

「どのように提供するのか」

を明確にするということである。

例えば、高齢者を対象とした健康増進サービスであれば、次のような事業ドメインが考えられる。

提供したい人は、虚弱高齢者や健康増進への関心が高い高齢者である。

提供するものは、運動・食事・生活習慣に関する指導や、地域活動・コミュニティへの参加支援などである。

提供方法としては、健康増進に詳しいセラピストが自宅を訪問したり、オンラインやSNSを活用したりする方法が考えられる。

このように事業ドメインを具体化することで、自社が「何をする会社なのか」が明確になる。

一方、事業ドメインが曖昧なままでは、魅力的に見える事業へ次々と手を広げ、本来の強みとは関係の薄い分野へ経営資源を投入してしまう可能性がある。

人材、資金、時間、ノウハウといった経営資源には限りがある。

特に中小企業や起業直後の企業では、すべての事業に十分な資源を投入することはできない。

だからこそ、「何をするのか」だけではなく、「何をしないのか」を決めることも重要である。

事業ドメインを明確にすることは、事業拡大を妨げるものではない。

むしろ、自社の強みを集中させ、顧客に対して一貫した価値を提供するための基盤となる。

また、新規事業を検討するときにも、その事業が既存の事業ドメインとどの程度つながっているのかを判断する基準になる。

事業ドメインが明確であれば、経営者だけでなく従業員も「自社は誰のために、どのような価値を提供する会社なのか」を共有しやすくなる。

結果として、意思決定のスピードが上がり、限られた経営資源を本業へ集中させることができる。

起業において重要なのは、思いついた事業を片っ端から行うことではない。

自分たちの強みを生かしながら、どの顧客に、どのような価値を、どのような方法で届けるのかを徹底的に考えることである。

その出発点となるのが、事業ドメインの設定である。

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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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