心身機能・活動・参加に配慮したリハビリテーションプログラムを作成することは、決して簡単ではない。
今回は、心身機能・活動・参加の関係性について考えてみたい。
リハビリテーションでは、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」のそれぞれを切り離して考えるのではなく、相互に影響し合うものとして捉える必要がある。
たとえば、「心身機能・身体構造」に働きかけることで筋力や関節可動域が改善し、歩行能力を獲得できたとしても、「活動」や「参加」が低い状態のままであれば、生活範囲が広がらず、結果として廃用や社会的孤立につながる可能性がある。
一方で、心身機能へのリハビリテーションに消極的な人であっても、「活動」や「参加」を促すことで、社会的役割への意欲や興味が高まり、その結果として心身機能を改善する必要性を本人が認識することもある。
つまり、リハビリテーションでは、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」のいずれか一つだけを重視するのではなく、三者へバランスよく働きかけ、その相互作用による効果を引き出すことが重要である。
介護保険制度において「自立支援」が重要な理念として掲げられている以上、リハビリテーションも、その人が可能な限り自立した生活を送ることを支援するものでなければならない。
そもそもリハビリテーションは、単に身体機能を改善することだけを目的とするものではない。
その人らしい生活を取り戻し、生活や人生におけるQuality of Lifeを支えていくことが重要である。
その意味では、「活動」や「参加」を重視することは当然である。
しかし、ここで注意しなければならないことがある。
それは、「活動」「参加」を重視するあまり、「心身機能・身体構造」の評価や改善可能性を十分に検討しないことである。
患者や利用者の基本動作能力、応用的動作能力、あるいは言語・嚥下・認知などの機能には、適切な評価と介入によって改善できる可能性が残されていることがある。
その可能性を十分に検討しないまま、「これ以上は改善しない」「今ある能力で生活を考えればよい」と判断してしまえば、本来引き出せたはずの能力を引き出せない可能性がある。
これは患者や利用者にとって大きな不利益になり得る。

この問題を考えるうえで重要になるのが、セラピストと利用者の間に存在する「情報の非対称性」である。
情報の非対称性とは、サービスを提供する側と受ける側で、保有している知識や情報の量に差がある状態を指す。
一般的に、利用者はセラピストほど、心身機能や活動、参加、予後に関する専門的な知識を持っていない。
そのため、セラピストから示された評価や説明を、そのまま受け入れる可能性が高い。
たとえば、あるセラピストが、
「あなたの身体機能はこれ以上改善しないので、自宅では歩行器を使って生活しましょう」
と説明したとする。
利用者自身には、「本当にこれ以上改善しないのか」を専門的に判断することは難しい。
そのため、その説明を受け入れる可能性が高い。
しかし、心身機能の評価や介入に長けた別のセラピストが評価すれば、
「まだ改善の余地があり、自立歩行を目指せる可能性がある」
と判断することもあり得る。
だからこそ、セラピストには大きな責任がある。
「活動」「参加」は、リハビリテーションにおける重要な目標であり、その人が自分らしく生きていくために欠かすことのできない概念である。
しかし、心身機能の改善可能性を十分に追求しないまま、「活動」「参加」という言葉だけを重視することにも問題がある。
大切なのは、「心身機能か、活動・参加か」という二者択一ではない。
心身機能を可能な限り高め、その能力を実際の生活活動につなげ、さらに社会参加や役割の再獲得へ広げていくことである。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、他職種と比較しても、医学的・専門的な視点から心身機能を詳細に評価し、改善可能性を検討できる専門職である。
その専門性を十分に活かしたうえで、「活動」「参加」を評価し、支援することが求められる。
特に、心身機能を適切に評価できれば、一定の予後予測が可能になる。
そして、その予後を踏まえて、どのような活動を目指すのか、どのような社会参加を実現するのかを提案できる。
これは、リハビリテーション専門職の大きな強みである。
心身機能を高める。
その能力を活動につなげる。
そして、活動を参加へと広げていく。
さらに、参加することが新たな意欲や活動を生み、再び心身機能にも良い影響を与える。
この循環を生み出すことこそが、リハビリテーションに求められる視点ではないだろうか。
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高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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