本稿では、リハビリ職種の皆さまとともに、あらためて「ストレッチング」について考えていきたい。
ストレッチとは、対象となる組織に伸張刺激を加えることである。
医療やスポーツの現場では、主に筋肉を一定方向へ伸ばす手技を「ストレッチング」と呼んでいる。
ストレッチングは、リハビリテーションの臨床で使用される頻度が高く、リハビリ職種にとって基本的な介入手段の一つである。
ストレッチングに期待される効果としては、関節可動域(以下、ROM)の改善、筋緊張の軽減、血流の増加、疲労感の軽減などが挙げられる。
また、障害予防や運動パフォーマンスの向上を目的として実施されることもある。
近年では、「バスキュラー・ストレッチ」という考え方も注目されている。
ストレッチングによって筋だけでなく血管にも伸張刺激が加わることで、伸張部位の血液循環、血管拡張能、動脈の伸展性などに影響を与えるという考え方である。

このように、ストレッチングはさまざまな目的で活用できる汎用性の高い手技である。
しかし、汎用性が高いからこそ、臨床で「とりあえずストレッチング」になっていないかを振り返る必要がある。
対象者の状態や筋の伸張性を十分に評価しないまま、大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋などに対して、慣習的にストレッチングを実施していないだろうか。
ストレッチングを適切に行うためには、まず「対象となる筋の伸張性が低下しているか」を評価する必要がある。
評価方法としては、ROMテスト、触診、各種の特殊テストなどが挙げられる。
これらの評価を通して、筋の伸張性低下を問題点として明確にした上で、ストレッチングの適応を判断することが重要である。
例えばROMテストでは、関節を他動的に動かしながら、運動中に生じる抵抗感や最終域での抵抗感であるエンドフィールを確認する。
最終域において、軟部組織が伸張されるような抵抗感を認めた場合には、筋やその他の軟部組織の伸張性が低下している可能性がある。
このような評価結果が得られた場合に、ストレッチングを介入手段の一つとして検討する。
筋の伸張性を評価する代表的な特殊テストとしては、腸腰筋を評価するトーマステスト、大腿四頭筋を評価するエリーテスト、ハムストリングスを評価するSLRテストなどがある。
ただし、これらのテストが陽性であるという理由だけで、直ちにストレッチングの適応と判断するべきではない。
疼痛、関節構造、神経症状、代償動作、日常生活やスポーツ動作への影響なども含め、総合的に判断する必要がある。
ストレッチングは、単に筋を伸ばせばよい手技ではない。
評価によって問題となる組織を明確にし、目的と適応を整理した上で実施することが重要である。
投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

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