キャリアコンサルティングを行っていると、実にさまざまな人と出会う。
その中には、私自身が驚くほど、豊富な知識と経験を持つ人もいる。
リハビリテーション分野で高い専門性を持ち、多くの組織から声がかかっても不思議ではない人材である。
ところが実際には、転職活動で十分な評価を受けられず、次の職場探しに苦労する場合がある。
なぜ、そのようなことが起こるのか。
大きな理由は、蓄積してきた知識や経験を、第三者が確認できる具体的な形にしていないことである。
学会発表、論文執筆、学位取得、研修会講師、プロジェクト成果、業務改善の実績、ブログやSNSによる情報発信などは、自分の専門性や実行力を社会に示す材料となる。
しかし、こうした実績が乏しければ、本人の中にどれほど優れた知識や経験があっても、その価値は外部から見えにくい。

採用担当者が、リハビリテーションの専門知識を持つとは限らない。
面接で高度な臨床経験や専門的な考えを説明しても、その価値や実力を正確に判断することは難しい。
だからこそ、資格や自己評価だけではなく、実力を確認できる「形」が重要になる。
知識や経験を宝の持ち腐れにしないためには、それらを用いて何を改善し、どのような成果を生み出したのかを明確にする必要がある。
患者や利用者、職員、組織に提供した価値を、数値、実績、発表、文章、講師歴として蓄積することが大切である。
転職は、単に自分の希望を伝える活動ではない。
採用者という取引相手に、自分を採用することで得られる価値を伝え、選んでもらうためのマーケティング活動である。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、資格だけで高待遇の転職を実現できる時代は、すでに終わっている。
これからは、何ができるのか、何を成し遂げたのか、採用後にどのような成果を生み出せるのかが問われる。
自分という人材を選んでもらうための材料を、日々の仕事の中で意識的につくり続けなければならない。
実力を成果へ変え、その成果を形にし、相手に伝えて初めて、キャリア上の価値として認識されるのである。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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