「ヒューマンスキル」とは、他者と良好な関係を築き、協働しながら仕事を進めるために必要な能力の総称である。
カッツの理論では、仕事に必要な能力を、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの三つに分類している。
このうちヒューマンスキルは、役職や経験年数にかかわらず、すべての職員に求められる普遍的な能力である。
特にPT・OT・STは、多職種と連携し、自分より年齢が高い患者、利用者、家族と関わる機会が多い。
そのため、臨床技術が高くても、配慮、説明力、感情のコントロール、適切な態度が欠けていれば、信頼関係は容易に崩れる。
ヒューマンスキルの欠落は、単なる印象の悪さではなく、情報共有の不足、連携の停滞、クレーム、離職、医療安全上の問題にもつながり得る。
PT・OT・STに必要なヒューマンスキルは、主に五つに整理できる。
第一は、ビジネスマナーである。
あいさつ、態度、身だしなみ、言葉づかいを、相手や状況に応じて適切に使い分ける能力である。
第二は、ロジカルシンキングである。
情報を整理し、物事を筋道立てて考え、相手に分かりやすく伝える能力である。
第三は、自己管理能力である。
感情、時間、体調、ストレスを自ら管理し、安定して役割を果たす能力である。
第四は、コミュニケーション能力である。
傾聴、質問、確認、承認を通じて、相手との信頼関係を形成する能力である。
第五は、キャリアプランニングである。
自分の強みや課題を理解し、将来を見据えて、必要な学習や経験を主体的に選択する能力である。

しかし、PT・OT・STの教育では、評価や治療技術などのテクニカルスキルが重視され、ヒューマンスキルは本人の性格や経験に委ねられやすい。
実際の医療・介護現場では、技術不足よりも、報告しない、相談できない、期限を守らない、感情的になる、相手の立場を考えないといった行動が、業務上の支障を生むことも多い。
さらに、先輩や管理者自身にヒューマンスキルが欠けていれば、新人や新入職者が適切な行動を学ぶことは難しい。
社会的学習理論では、人は他者の行動を観察し、模倣することで学習するとされている。
つまり、職場に良いモデルがいなければ、不適切な態度や行動まで次の世代へ継承される可能性がある。
だからこそ、今の時代のPT・OT・STには、職場任せではなく、自ら能動的にヒューマンスキルを学ぶ姿勢が求められる。
セミナー、研修、資格取得などで基礎を学び、現場で実践し、周囲からのフィードバックを受けながら修正することが重要である。
臨床技術とヒューマンスキルの両方を高められる人材こそ、多職種、患者、家族から信頼され、これからの医療・介護現場で長く活躍できる人材となる。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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