利用者の状態変化を見逃さないために必要な医師連携の視点

なかなか痛みがとれない、歩行や立ち上がりが不安定になっている、物忘れやつじつまの合わない会話が多いなどの症状が生じている利用者への対応に困っている方は多いのではないだろうか。

原則、リハビリテーションや機能訓練は、何らかの「病気」や「後遺症」に対して行うことが多く、その診断は医師により行われている。

リハビリ職種も、何らかの「病気」や「後遺症」に対してサービスを提供しているはずである。

しかし、現実的には、利用者にはさまざまな病気や症状が追加的に起こってくる。

そのため、先述したように「なかなか良くならない症状や状態」「徐々に状態が悪くなる状態」には頻繁に出会う。

このような時に大切なのは、診断を受けて「確定診断」を得ることである。

リハビリテーションや機能訓練の効果を最大に発揮するためには、疾患や後遺症に対する病態を確実に把握した上で、リスク管理を行い、運動療法等を進めていくことである。

リハビリテーションは、単に身体を動かせばよいというものではない。

痛み、不安定性、認知機能の低下、活動量の低下などには、それぞれ背景となる病態が存在する。

原因が筋力低下なのか、炎症なのか、神経症状なのか、内科的疾患なのかによって、介入の方法も禁忌も大きく変わる。

つまり、評価と介入は病態仮説に基づいて行われるべきであり、その仮説の精度を高めるためにも医師による診断は重要である。

例えば、肩関節拘縮で関節可動域練習を行っていたが、痛みが強くなり、可動域が改善しなくなったとする。

この場合、腱板損傷や関節内の炎症が生じている可能性があり、適切なリスク管理や治療をしなければ、さらに状態が悪化する可能性がある。

腱板損傷や炎症は、適切な診断を受けなければ発覚しない。

また、歩行が不安定になった場合も、単なる筋力低下とは限らない。

脳血管障害、末梢神経障害、薬剤の影響、脱水、感染症、循環器疾患などが背景にある可能性もある。

物忘れや会話のつじつまが合わない場合も、認知症だけでなく、せん妄、薬剤性、代謝異常、脳血管疾患などを疑う必要がある。

リハビリテーションや機能訓練は、適切な病態理解の上にしか成立しない。

したがって、医師との連携は極めて重要であると言える。

少しでも利用者に変化があれば、「様子を見る」だけで済ませるのではなく、確定診断を得るという意識を持つことが重要である。

リハビリ職種は診断を行う立場ではない。しかし、変化に気づき、異常を疑い、医師へ適切につなぐ役割を担っている。

その視点を持つことが、利用者の安全を守り、リハビリテーションや機能訓練の質を高めることにつながるのである。

運動器疾患のリハビリテーションに関して学びたい方 →セミナー一覧 投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

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