1.「家の中でいつも同じところで躓く」
2.「あそこの敷居に足がよく引っかかって危ない」
3.「昨日、また家の中でこけました」
ここで、『転倒』について考えてみることにする。
転倒とは、単純に言えば『転ぶこと』であるが、定義としては「本人の意思に反して、足以外の身体の部分が床に接すること」とされている。
つまり、1.と2.の場合は、足が躓いた、あるいは足が引っかかっただけであり、厳密には転倒とはいえない。
しかし、3.の場合はどうであろうか。
「こけました」という言葉だけでは、それが転倒に該当するかどうかは判断できない。
そのため、その後に何が起こったのかを丁寧に確認することが重要である。
つまり、「こけました」→「足で何とか踏ん張りました」であれば転倒には含まれない。
一方で、「こけました」→「床で膝をぶつけました」であれば、足以外の身体の一部が床に接しているため、『転倒』したといえるのである。

高齢者に対する転倒の発生率について、渡辺丈眞「高齢者転倒の疫学」(理学療法 18巻9号:841-846, 2001)では、地域在住の高齢者の10~20%、施設入所者の10~50%が、1年に1回以上の転倒を経験しているとされている。
このうち全体では、約半数が屋外での転倒を経験している。
しかし、75歳以上の大腿骨近位部骨折、すなわち大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折等に限ってみると、その3/4、つまり75%が室内で転倒しているという。
この事実は、在宅生活における転倒予防の重要性を示している。
屋外での転倒対策だけでなく、敷居、段差、床面、照明、動線など、生活環境そのものを評価する視点が求められる。
今後、ますます高齢者が増加することを踏まえると、それに伴って転倒の発生率や大腿骨近位部骨折を受傷する高齢者の割合が高くなることは当然であろう。
だからこそ、転倒を「単なる事故」と捉えるのではなく、生活環境と身体機能の両面から予防的に関わる必要がある。
投稿者

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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