高齢者の在宅生活における運動不足と低栄養の問題

日本では平均寿命が高い水準で推移しており、2024年の簡易生命表では男性81.09年、女性87.13年と報告されている。また、65歳以上の一人暮らしも増加しており、在宅で長く生活する高齢者を支える視点は、リハビリテーションにおいてますます重要になっている。

在宅高齢者の生活課題として見逃せないのが、運動不足と低栄養である。高齢になると、退職、配偶者や友人との死別、外出機会の減少などにより、人間関係が希薄になりやすい。社会とのつながりの低下は、生活範囲の縮小、活動量の低下、食欲低下、栄養の偏り、筋肉量低下へと連鎖しやすく、これは「フレイル・ドミノ」として説明されている。

また、心身機能や体力の低下により買い物が負担となったり、独居では調理意欲が低下したりすることで、食事内容が簡素化することも多い。パンや果物だけで食事を済ませる生活では、エネルギーやたんぱく質が不足しやすい。たんぱく質不足は筋たんぱく合成を低下させ、運動不足と重なることでサルコペニア、すなわち骨格筋量と筋力の低下を進行させる。

骨格筋量の低下は、単に「足が弱る」だけの問題ではない。下肢筋力が低下すると、立ち上がり、歩行、階段昇降の安定性が低下し、膝関節、股関節、腰部への力学的負担が増える。その結果、疼痛や転倒リスクが高まり、さらに活動量が低下するという悪循環に陥る。

加えて、骨格筋は呼吸循環機能にも関係する。筋量が少なくなると、活動時に酸素を利用する能力が低下し、少し動いただけでも息切れや脈拍上昇が生じやすくなる。つまり、骨格筋の低下は整形外科的問題だけでなく、全身持久力や生活耐久性の低下にもつながる。

したがって、高齢者の在宅生活を支えるリハビリ職種は、痛みや関節可動域だけでなく、日々の活動量、外出頻度、食事内容、体重変化、たんぱく質摂取状況を確認する必要がある。フレイルに対しては、運動介入が歩行、筋力、身体機能、ADLの改善に有効であり、運動と栄養を組み合わせた介入も推奨されている。

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高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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