セラピスト業界には、ハンズオン技術に長けている人が多い。
手つきが非常に繊細で、見ていても非常に「見栄え」のする治療場面が展開されることがある。
このようなセラピストは、同じセラピストからも、ある種の憧れを持たれる存在になりやすい。
しかし、残念ながら、テクニックそのものに過度に傾倒する「テクニック信奉者」が存在する。
「テクニック信奉者」は、ハンズオンの技術には長けている一方で、患者の病理、疾患特性、服薬状況、生活パターン、家族背景、住環境などに十分な関心を示さない(下図)。
その結果、見た目には高度な治療をしているように見えても、実際には患者の生活に結びつかない、非常に質の低いリハビリテーションを提供してしまうことになる。
痛みや関節可動域の改善にばかり目が向き、患者の日常生活動作の改善や、疾患に応じた生活指導、再発予防、自己管理支援などを軽視しているセラピストが典型的な事例である。
ベッドの上で一時的に痛みや可動域が改善しても、日常生活での活動量が増えず、生活範囲が広がらず、QOLが低下している状況であれば、リハビリテーションが成功しているとは言えない。
リハビリテーションにおいて重要なのは、ベッド上で起こる変化ではなく、その変化が実際の生活にどのように反映されるかである。
立ち上がれるようになったのか、歩ける距離が伸びたのか、トイレ動作が自立したのか、食事や更衣が楽になったのか、家族の介助負担が軽減したのか。
こうした生活上の成果に結びついてこそ、リハビリテーションには本当の価値が生まれる。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の中には、生理学、病理学、薬理学、手術内容、画像所見、生活パターン、社会的背景などに対して十分な興味を示さない者がいる。
しかし、そのような姿勢では、真の意味でのリハビリテーションを展開することはできない。
患者や利用者の生活や人生を支援する仕事が、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士である。
だからこそ、セラピストには、技術だけでなく、疾患を理解する力、生活を読み解く力、チームで連携する力、そして患者の人生に向き合う姿勢が求められる。
ハンズオンテクニックのみを重視し、ベッド上だけの変化や一時的なQOLにこだわる「テクニック信奉者」は、これからの時代には通用しないセラピストである。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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