リハビリ場面で注意したい起立性低血圧の理解と対応

起立性低血圧により、リハビリが思うように進まない症例に出会ったことはないだろうか。

立ち上がり練習を行うために、座位から立位へ移行した瞬間、めまいやふらつきが出現し、転倒しそうになる場面は臨床でも少なくない。このような状態は「起立性低血圧」である。

起立性低血圧とは、臥位から座位、座位から立位へ姿勢を変えた際に血圧が低下し、一時的に脳への血流が不足することで、めまい、ふらつき、気分不快、失神に近い症状を生じる現象である。一般的には、起立後に収縮期血圧が20mmHg程度低下することが一つの目安とされる。

人間は、臥位から座位、座位から立位になると、重力の影響によって上半身にあった血液が下半身へ移動する。そのままでは脳血流が低下してしまうが、通常は大動脈弓や頸動脈洞に存在する圧受容器が反応し、自律神経反射を介して血圧を調整している。

具体的には、交感神経の働きにより心拍数や心収縮力が高まり、血管の緊張も上昇することで、血圧低下を最小限に抑えている。つまり、人間の身体には、姿勢変化に伴う血圧低下を防ぐ仕組みが備わっている。

しかし、高齢者では自律神経の反応が遅くなりやすい。また、パーキンソン病など自律神経が障害されやすい疾患、心不全など低血圧症状を伴いやすい病態、著しい下肢筋力低下を有する利用者では、姿勢変化に対して十分に血圧を上げることが難しくなる。その結果、起立性低血圧が生じやすくなる。

長期臥床の利用者では、座位や立位をとる機会そのものが少なくなり、自律神経の反応もさらに低下しやすい。そのため、可能な範囲で座位をとり、段階的に離床を進めることは、自律神経の反応を促す重要なリハビリとなる。

一方で、起立性低血圧が強い利用者に対して、いきなり座位や立位をとらせることは危険である。背もたれを少しずつ上げる、端座位の時間を短く設定する、立位前に下肢運動を行うなど、段階的に身体を慣らしていくことが望ましい。

また、リハビリ場面では血圧、脈拍、自覚症状を確認しながら進めることが重要である。必要に応じて弾性ストッキングの使用、水分摂取状況の確認、医師や看護師との情報共有を行い、安全に離床を進める視点が求められる。起立性低血圧は転倒や失神につながる重要なリスクである。

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高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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