最近、全国の事業所でコンサルティングや講演活動をしていると、よく見聞きする事柄がある。
それは、リハビリテーション部門が介護部門の「下請け」のような状態になっていることである。
ここで言う「下請け」とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのセラピストが、本来担うべきリハビリテーション業務を十分に遂行できないまま、介護職の業務補助に多くの時間を費やしている状態を指す。
特に、通所介護、通所リハビリテーション、老人保健施設、療養型病院などで、このような状況が見受けられる。

もちろん、リハビリテーション部門が介護部門を支援すること自体が問題なのではない。
多職種連携の観点からも、必要に応じて他部門を支援することは重要である。
しかし問題は、他部門の支援を優先するあまり、本来実施すべきリハビリテーション業務がおろそかになっていることである。
実際に、介護部門の下請け状態に陥っているリハビリテーション部門では、算定すべき報酬や加算が十分に取れていない、作成すべき書類や記録が不十分である、通所介護計画書やカルテ記録の質が低下している、といった問題が生じている。
さらに深刻なのは、利用者に対するリハビリテーションそのものの質が低下していることである。
リハビリテーション部門の本来の役割は、単に現場の人手不足を補うことではない。
利用者の心身機能、活動、参加、生活課題を評価し、専門職として必要な介入を行い、その結果を記録・説明・改善につなげることである。
この本来業務が後回しになっているのであれば、それは多職種連携ではなく、単なる業務の肩代わりである。
リハビリテーション部門が介護部門の下請け状態になる原因は、大きく二つある。
一つ目は、組織や管理職が、リハビリテーション部門として必ず達成すべき業務を明確にできていないことである。
どの加算を算定するのか。
どの書類を、誰が、いつまでに、どの水準で作成するのか。
利用者に対して、どのような評価と介入を標準的に実施するのか。
これらが不明確なままでは、現場のセラピストは優先順位を判断できない。
その結果、本来業務への意識が低下し、目の前で発生する介護業務や雑務に時間と労力が分散していく。
二つ目は、セラピスト自身が、専門職としての役割や責任を十分に自覚できていないことである。
セラピストとしての評価力、介入力、書類作成能力、説明能力が不十分な場合、本来業務で価値を発揮することが難しくなる。
その結果、組織の中で自分の存在意義を示すために、他部門の業務支援に過度に依存してしまうことがある。
もちろん、他部門を助ける姿勢は大切である。
しかし、それによって専門職として果たすべき責任から逃げているのであれば、それは本質的な問題である。
リハビリテーション部門が真の意味で自立した組織になるためには、組織と個人の双方が変わらなければならない。
組織は、リハビリテーション部門が必ず達成すべき業務を明確にし、業務の優先順位、記録の基準、加算算定の仕組み、利用者への介入内容を整備する必要がある。
一方で、セラピスト自身も、自らの専門性を高め、本来業務で成果を出す覚悟を持たなければならない。
他部門を支援するのは、自分たちがやるべきことを達成した後である。
リハビリテーション業務、書類作成、記録、加算算定、利用者への評価と介入が適切に行われている。
そのうえで余剰の時間や人的資源があるならば、介護部門を支援すればよい。
順番を間違えてはならない。
リハビリテーション部門が本来業務を後回しにしたまま、他部門の支援ばかりに時間を費やせば、最終的には書類不備、報酬算定漏れ、質の低いリハビリテーションが横行する。
それは、組織にとっても、利用者にとっても、セラピスト自身にとっても不幸なことである。
リハビリテーション部門は、介護部門の下請けではない。
介護部門と連携しながらも、専門職としての役割を果たし、利用者の生活機能の改善に責任を持つ部門である。
そのためには、組織はリハビリテーション部門の役割を明確にし、セラピストは専門職としての誇りと能力を高める必要がある。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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