人生や仕事において、明確な目標を言語化し、日々の行動に結びつけている人は決して多くない。
多くの人にとって、将来の姿を具体的に想像することは簡単ではない。
特に、仕事や生活に不安がある時期ほど、前向きな未来像を描くことは難しくなる。
職場の上司との面談では、部下に仕事上の目標や今後のキャリア目標を設定してもらう場面がある。
しかし、目標を設定すること自体が、本人にとって大きな負担になることがある。
実際に、目標設定を求められると、何を考えればよいのか分からなくなったり、自分の将来像をうまく言葉にできなかったりする人は少なくない。
また、「目標を持てるのは、頭のいい人や能力の高い人だけではないか」「自分には明確な目標を設定する力がない」と感じる人もいる。
では、目標設定は本当に、頭のいい人や能力の高い人だけができるものなのだろうか。
答えは「No」である。
目標設定は、能力の高さだけで決まるものではない。
むしろ、自分が何を大切にしているのか、どのような仕事に意味を感じるのかという価値観の延長線上に生まれるものである。

したがって、目標設定において重要なのは、まず自分の価値観を明確にすることである。
価値観が分からないまま無理に目標を作ろうとしても、表面的な目標になりやすい。
価値観を明確にする方法は、特別な自己分析だけではない。
目の前の仕事に真剣に取り組むことも、価値観を知る重要な機会になる。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として一生懸命に働いていれば、「やりがいを感じる仕事」にも、「苦手だと感じる仕事」にも出会う。
その感情には、自分の価値観が反映されている。
何に喜びを感じるのか。
何に違和感を覚えるのか。
どのような患者支援、チーム活動、学習、役割に意味を感じるのか。
それらを丁寧に振り返ることで、自分が大切にしているものが見えてくる。
価値観が明確になれば、その延長線上にある目標を設定しやすくなる。
目標とは、突然ひらめくものではなく、日々の経験と振り返りの中から少しずつ形になるものである。
ただし、目の前の仕事に主体的に取り組まなければ、自分の価値観に気づく機会は少なくなる。経験を積むだけでなく、その経験から何を感じたのかを振り返ることが重要である。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として目標を持てない人は、まず今の仕事に真剣に取り組んでほしい。
目の前の仕事に向き合い、自分の感情や反応を振り返ることで、自分が大切にしたい働き方や将来の方向性が少しずつ見えてくる。
その積み重ねの先に、あなたの人生における目標は、自然と輪郭を持ち始める。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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