一昔前に比べると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の転職は、もはや珍しいことではなくなった。
30代半ばまでに複数の職場を経験している人も、決して少なくない。
このように転職が一般的になった背景には、いくつかの要因がある。
まず、「一つの職場で長く働き続けることが当たり前」という価値観が以前より弱まっていることが挙げられる。
さらに、転職を支援・斡旋するエージェント会社が数多く存在し、転職そのものへの心理的ハードルが下がっている。
加えて、SNSの普及により、他人の転職事情やキャリアの変化を目にする機会が増え、転職への関心が高まりやすい状況もある。
そのなかで、多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が転職時に重視しているのは、「今より給与が高い職場に移ること」である。
言い換えれば、給与を上げることを主な目的として転職を考える人が多いということである。
しかし、給与アップだけを基準に転職先を選んだ結果、転職後に職場で十分なパフォーマンスを発揮できず、結局は再び退職に至るケースも少なくない。
つまり、給与だけを見た転職には、見落とされやすいリスクがある。
実は、転職には大きく分けて二つのタイプがある。
1.学び重視型転職
一つ目は、学び重視型転職である。
これは、転職先で多くの知識や経験を吸収し、自分自身の成長やスキルアップを実現することを目的とした転職である。
この場合、転職の主目的は「学ぶこと」にある。
そのため、転職先の組織にすぐ大きな価値を提供することは難しく、組織への貢献には一定の時間がかかる。
当然ながら、最初から高い給与を得ることは容易ではない。
2.価値創出型転職
二つ目は、価値創出型転職である。
これは、自分がこれまで培ってきた知識や経験を転職先の組織に提供し、その結果としてサービスの質向上や売上向上などに寄与する転職である。
このタイプでは、転職先に対して明確な価値提供ができるため、給与について交渉できる余地も生まれやすい。
その結果として、高い給与を得られる可能性も高くなる。
つまり、現状より高い給与を得たいのであれば、単に転職するだけでは不十分であり、自分が相手の組織にどのような価値を提供できるかが重要になるということである。
もし十分な価値提供ができないにもかかわらず、高い給与だけを求めて転職してしまえば、当然ながら職場での評価は厳しくなる。
その結果、居心地の悪さを感じたり、処遇面で不満が生じたりし、再び転職を考える悪循環に陥ることもある。
だからこそ、給与を上げるための転職にはリスクがあることを理解しておくべきである。
転職を考えている人は、自分がこれからしようとしている転職が、学び重視型転職なのか、それとも価値創出型転職なのかを冷静に見極める必要がある。
転職は、人生やキャリアを大きく左右する重要な意思決定である。
目先の給与だけにとらわれるのではなく、自分が何を得たいのか、そして何を提供できるのかを整理したうえで判断することが大切である。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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