ソーシャルワークとは、生活を営むうえで何らかの困難を抱えている人の多様なニーズを把握し、社会資源を活用しながら援助を行う専門的な対人援助技術である。
その本質は、単に個人の問題を解決することではなく、本人を取り巻く環境との相互作用に目を向けながら、よりよい生活の実現を支援する点にある。いわゆる「人と環境の相互作用(person-in-environment)」の視点が、ソーシャルワークの基盤である。
ソーシャルワークの対象は、大きくミクロ・メゾ・マクロの3つのレベルに分けて考えることができる。
ミクロ・ソーシャルワーク
ミクロ・ソーシャルワークは、主として個人を対象とした支援である。個人面接を通して、利用者の課題やニーズを把握し、必要に応じて適切なサービスを調整・提供していく。主な手法は面接であり、その過程のなかで利用者自身が自分の課題を明確に理解し、課題解決に向けて自己決定できるよう支援することが重視される。
この支援には、受容的・非審判的な態度、秘密保持、人権尊重、そして援助計画を立案する能力が求められる。理論的には、本人の意思と力を引き出すエンパワメントの視点が重要であり、「してあげる支援」ではなく「本人が主体となる支援」が求められる。
具体例としては、カウンセリング、面談、個別リハビリテーションなどが挙げられる。
メゾ・ソーシャルワーク
メゾ・ソーシャルワークは、集団や組織を対象とした支援である。集団の構成メンバーに対して支援を提供し、メンバー同士の相互関係を発展させながら、課題解決を促していく。
集団支援では、参加者に強制が生じないよう、「離脱できる自由の保障」が重要である。人は他者と関わるなかで、自分自身を客観視し、自らの問題に気づくことがある。また、他者への共感や相互交流を通じて孤立状態から脱却し、社会参加への意欲を高めていくことができる。さらに、集団のなかでは役割や責任が生まれやすく、それが社会の一員としての自己効力感や活性化につながる。
この領域では、グループダイナミクスや相互作用の理解が理論的基盤となる。具体例としては、通所介護、通所リハビリ、患者の会、地域グループなどが挙げられる。
マクロ・ソーシャルワーク
マクロ・ソーシャルワークは、地域社会や制度、社会構造を対象とした支援である。生活上の困難を抱える個人を支援するだけでなく、その背景にある社会的課題や制度的課題にも着目し、地域社会全体に働きかけていく。
ここでは、個人の困難を「本人だけの問題」として捉えるのではなく、社会資源の不足、制度設計の不備、地域の支援体制の弱さといった、サービス供給側の課題にも目を向ける必要がある。つまり、ソーシャルワークは個人支援でありながら、同時に社会変革の視点も含んでいるのである。
具体例としては、NPO、社会福祉協議会、行政、一般社団法人、株式会社などが挙げられる。

リハビリ職種の職域拡大とキャリアデザインへの示唆
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の職域拡大やキャリアデザインを考えるうえでも、ソーシャルワークの視点は有用である。なぜなら、専門職としての価値は、単に知識や技術を持っていることではなく、それを誰に、どの場で、どのように提供し、社会にどのような価値を生み出すかによって決まるからである。
たとえば、個人に直接支援を提供するミクロの領域だけでなく、通所・集団支援といったメゾの領域、さらには地域づくりや制度設計、事業開発といったマクロの領域にも目を向けることで、専門職としての可能性は大きく広がる。
自身の持つ知識や経験を、どのような場で提供し、どのように社会の役に立てていくのか。さらに、それをどのような仕組みで収入へと結びつけていくのか。これらを考える際に、ソーシャルワークのミクロ・メゾ・マクロモデルを活用すると、自分の専門性の活かし方や新たなキャリアの方向性を整理するヒントが得られるであろう。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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