人の成長は、今まで以上に労力と時間をかけなければ達成できない課題や作業に取り組んでいる時に生じる。
自分がすでに出来ることだけを繰り返していても、能力は大きく伸びない。
成長するためには、自分が出来ることの少し先にある「少ししんどい仕事」に挑戦する必要がある。
しかし、人間は本能的に変化のない状態を好む。
これを現状維持バイアスという。
現状維持バイアスとは、変化するよりも、今の状態を維持したいと感じる心理作用である。
たとえ変化することで利益を得られる可能性があったとしても、人は失敗や不安を恐れ、行動を起こせなくなることがある。
これは決して珍しいことではなく、人間が持つ自然な心理的特徴である。
また、心理的負担のない課題や作業は、自分にとって非常に居心地が良い。
このような心理的負担の少ない領域をコンフォートゾーンという。
つまり、人間は成長を妨げる心理である現状維持バイアスを持っており、さらにコンフォートゾーンを好む生き物なのである。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の方で、何年経っても成長していない人に出会うことがある。
そのような人は総じて、日々の仕事内容の量も質も変わっていない。
新しい役割を引き受けない。難しい症例に向き合わない。後輩指導や組織課題にも関わらない。
つまり、自分に負荷がかからない場所に居続けているのである。
彼らは「成長したい」と口では言うかもしれない。
しかし、実際の行動を見ると、変化を避け、挑戦を避け、責任を避けている。
それは、現状維持とコンフォートゾーンの中毒になっている状態である。
もちろん、無理をすれば良いという話ではない。
過剰な負荷は心身を壊す。重要なのは、自分の能力より少しだけ高い課題に挑戦することである。
少し不安、少し面倒、少ししんどい。
その程度の負荷が、成長には最も重要である。
読者のみなさんは今、コンフォートゾーンにいるだろうか。
もし、今の仕事が楽で、何の緊張感もなく、昨日と同じことを繰り返しているだけなら、成長は止まっている可能性が高い。
一方で、少し居心地の悪い状況にいる方は喜んでも良い。
それは、あなたが成長できる空間にいるということだからである。
成長とは、快適さの中ではなく、少し不快な挑戦の中で生まれるのである。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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