なぜリハビリ職種は起業しないのか

日本における起業活動は、国際的に見ても低い水準にある。指標の取り方によって数値は異なるが、開業率はおおむね4〜5%台、GEMの総合起業活動指数(TEA)でも2023年は6.1%にとどまっており、欧米諸国と比較して起業が一般的な選択肢になっているとは言い難い。さらに、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ職種に目を向けると、その傾向はより顕著である。リハビリ職種全体の最新統合データは限られるものの、理学療法士の自営・開業割合は0.1%台とする報告があり1)、少なくともリハビリ職種における起業は、極めて少数派のキャリアであると考えられる。
※GEMとは、世界各国の起業活動を比較する国際調査である。
※TEAとは、GEMで用いられる指標で、起業準備中または創業初期にある人の割合を示す。

では、なぜリハビリ職種の起業は広がりにくいのか。

第一に、リハビリ職種は養成課程や臨床現場において、病院・施設・事業所に雇用されることを前提とした職業的自己概念を形成しやすい。専門職として患者・利用者に貢献する意識は強い一方で、自ら事業をつくり、サービスを設計し、地域課題を解決するという発想を学ぶ機会は少ない。つまり、起業が能力の問題以前に、そもそもキャリアの選択肢として認識されにくいのである。

第二に、起業支援の環境が十分に整っていない。職能団体や養成校においても、臨床技術や制度理解に関する教育は多いが、事業計画、資金調達、マーケティング、法制度、リスク管理を体系的に学ぶ機会は限られる。そのため、起業に関心を持つ人であっても、何から始めればよいのか分からず、心理的ハードルの高さから行動に移せないことが多い。

しかし、地域包括ケアシステムでは、自助・互助の役割がますます重要になっている。介護保険・医療保険の枠内だけでは支えきれない生活課題に対して、リハビリ職種が専門性を活かしたサービスを生み出す意義は大きい。リハビリ職種がこの領域に踏み出さなければ、自助・互助の市場は他企業や他職種によって担われていくだろう。だからこそ、今こそ、リハビリ職種の起業を特別な例外ではなく、今後地域を支える新しいキャリアの一つとして育てていく必要がある。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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