理学療法士・作業療法士・言語聴覚士には、大きく分けて3つの働き方が存在する。
しかし、多くのセラピストは、その選択肢を十分に知らないまま、特定の働き方だけを漫然と継続していることが少なくない。
もちろん、一つの職場で長く働くことにも大きな価値がある。だが、それが「自ら選んだ働き方」なのか、「他の選択肢を知らないまま続けている働き方」なのかでは、キャリアの意味が大きく異なる。
これからの時代、PT・OT・STは、自分の価値観、生活状況、将来設計、専門性の方向性を踏まえながら、働き方を主体的に選択していく必要がある。
セラピストの働き方は、主に以下の3つに整理できる。
- 医療機関や介護事業所などの組織に所属して働く
- フリーランスやコンサルタントとして働く
- 起業し、自身で事業を運営する
それぞれの働き方には、当然ながらメリットとデメリットがある。重要なのは、どれが正解かを決めつけることではない。自分に合った働き方を見極めることである。

1. 医療機関や介護事業所などの組織に所属して働く
最も一般的な働き方は、医療機関や介護事業所などに雇用されて働く形である。
病院、クリニック、介護老人保健施設、通所リハビリ、訪問看護ステーション、通所介護などに勤務するPT・OT・STの多くが、この働き方に該当する。
この働き方では、雇用主である組織の方針や役割に基づいて業務を行うことになる。仕事内容は、所属する組織の規模や機能によって大きく異なる。
大規模な病院であれば、急性期、回復期、外来、訪問などの部門が分かれており、比較的専門的な役割を担うことが多い。一方で、小規模な医療機関や介護事業所では、外来、入院、訪問、書類業務、地域連携、時には管理業務まで幅広く担当することもある。
小規模な組織で働くことは、多様な経験を積めるというメリットがある。臨床だけでなく、運営、連携、制度対応などを学ぶ機会も多い。
一方で、兼務業務が増えすぎると、長時間勤務や業務負担の増加につながりやすい。そのため、働きやすさやキャリア形成の観点から、自分がどのような環境で成長したいのかを考える必要がある。
組織に所属して働く最大の利点は、安定性である。組織が継続している限り、一定の給与や福利厚生を得ることができる。また、組織の中で成果を出せば、役職、教育担当、管理職などへキャリアを広げることも可能である。
さらに、組織で働くことで、医療機関や介護事業所がどのような人材を求めているのかを肌で感じることができる。これは、将来フリーランスや起業を考える場合にも大きな財産となる。
2. フリーランスやコンサルタントとして働く
2つ目の働き方は、フリーランスやコンサルタントとして働く形である。
これは、自分の知識、経験、技術、専門性を価値として市場に提供し、その対価として報酬を得る働き方である。
医療経営や介護事業のコンサルタント、特定のリハビリテーション領域に特化した技術系コンサルタント、研修講師、プロジェクト単位で活動するフリーランスセラピストなどが、この働き方に該当する。
この働き方の特徴は、時間の使い方や仕事の選び方に一定の自由があることである。どのクライアントに価値を提供するのか、どの分野に専門性を発揮するのか、どの程度の仕事量にするのかを、自分で設計しやすい。
しかし、自由度が高い一方で、求められる責任も大きい。
フリーランスやコンサルタントは、年齢、学歴、肩書き、勤務年数だけで評価されるわけではない。クライアントは、純粋に「この人は自分たちに価値を提供してくれるのか」という視点で判断する。
つまり、この働き方では、提供できる価値の質を高め続けることが極めて重要である。
臨床力、説明力、課題解決力、資料作成力、発信力、営業力、信頼構築力など、組織内で働く時以上に幅広い能力が求められる。
また、仕事が継続的に得られる保証はない。自分の価値が市場に認められなければ、収入は安定しにくい。そのため、自己研鑽を継続し、自分の専門性を明確にし、信頼される実績を積み上げていく姿勢が不可欠である。
この働き方は、自由であると同時に、厳しい働き方でもある。だからこそ、自分の専門性を社会に直接届けたいセラピストにとっては、大きな可能性を持つ選択肢である。
3. 起業し、自身で事業を運営する
3つ目の働き方は、起業し、自身で事業を運営する形である。
これは、自ら資金を拠出し、会社や事業を立ち上げ、サービスを提供していく働き方である。
訪問看護ステーション、通所介護、整体院、自費リハビリ施設、研修事業、オンライン教育事業、リハビリ関連のインターネットサービスなどを運営するセラピストが、この働き方に該当する。
起業では、臨床能力だけではなく、経営全般に関する力が求められる。
事業の方針立案、資金管理、営業、集客、サービス設計、人材採用、教育、労務管理、顧客対応、制度理解、リスク管理など、担うべき役割は非常に多い。
従業員を雇用する場合は、組織をつくる責任も生じる。雇用しない一人会社であっても、売上、利益、サービス品質、顧客満足、事業継続の責任はすべて自分にある。
起業の大きな魅力は、事業が成功した時の経済的なメリットが大きいことである。また、自分の理念や価値観を事業に反映しやすい点も大きな特徴である。
一方で、失敗した時のリスクもある。収入が不安定になることもあれば、資金繰りに悩むこともある。すべての意思決定に責任を持たなければならないため、精神的な負担も小さくない。
起業は、単に「自由に働きたい」という理由だけで選ぶべき働き方ではない。社会にどのような価値を提供したいのか、その価値に対して顧客がお金を払う理由があるのかを、冷静に考える必要がある。
しかし、自分の専門性や理念を事業として形にしたいセラピストにとって、起業は非常に大きな可能性を持つ働き方である。
働き方を知ることは、キャリアの可能性を広げることである
PT・OT・STの働き方は、決して一つではない。
組織に所属して安定的にキャリアを築く道もある。フリーランスやコンサルタントとして、自分の専門性を市場に提供する道もある。起業し、自ら事業を運営する道もある。
どの働き方にも、メリットとデメリットがある。大切なのは、他人の価値観に流されることではなく、自分の人生やキャリアに照らして選択することである。
また、これらの働き方は完全に分断されているものではない。組織で働きながら副業として研修講師を始める人もいる。フリーランスとして活動した後に法人化する人もいる。起業した後に、再び組織と連携しながら仕事を広げる人もいる。
つまり、働き方は固定されたものではなく、人生の段階や価値観の変化に応じて変えていくことができるのである。
自分の可能性を狭めないためには、まず選択肢を知ることが重要である。
PT・OT・STとしてのキャリアを考える時、目の前の職場だけを見るのではなく、業界全体、社会の変化、自分の強み、将来の生活設計まで含めて考える必要がある。
広い視野で働き方を捉えることが、これからのセラピストに求められるキャリア戦略である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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