大量経験の先に、自分の価値観は見えてくる

好きなことが見つからない。
やりたいことが見つからない。
目標が決まらない。

このように悩むセラピストは多い。

セラピストには、「セラピストになること」そのものが目標だった人が少なくない。

そのため、国家試験に合格し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として働き始めた瞬間に、大きな目標を失ってしまうことがある。

そして、その後は「自分の好きなことは何か」「本当にやりたいことは何か」を探す旅に出る。

しかし、いつまでたっても好きなことや、やりたいことに出会えない人がいる。

これはなぜか。

好きなことや、やりたいことが見つからない理由の一つは、圧倒的に経験量が少ないからである。

特に、「嫌なこと」「面倒なこと」「苦手なこと」を経験する量が少ない。

社会は、自分がやりたいことだけを与えてくれる場所ではない。

むしろ、仕事の多くは「誰かがやらなければならないこと」であり、ときには「多くの人がやりたがらないこと」も求められる。

しかし、その与えられた仕事を大量にこなした人には、ある特権が生じる。

それは、「やりたくないことを経験する中で、やりたいことや自分に向いていることに出会える」という特権である。

人間は、頭の中で考えているだけでは、自分の価値観を発見することはできない。

実際に経験し、うまくいったこと、苦しかったこと、嫌だったこと、意外と楽しかったことを積み重ねる中で、自分の価値観は少しずつ明確になっていく。

「嫌なこと」を経験すると、「これは自分には合わない」と気づくことができる。

同時に、「これは嫌ではない」「これはもう少し深めてみたい」という感覚にも気づくことができる。

つまり、好きなことは最初から目の前に現れるものではない。

大量の経験の中から、少しずつ浮かび上がってくるものである。

その意味で、自分の価値観を見つけることができない人は、まだ経験値が十分ではない可能性が高い。

楽な仕事だけを引き受ける。
できるだけ多くの仕事を抱えない。
面倒な仕事から逃げる。

このような姿勢では、好きなことや本当にやりたいことは見つかりにくい。

特に、経験年数の若い理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、大量にさまざまなことを経験するべきである。

臨床、書類業務、多職種連携、家族対応、後輩指導、地域活動、勉強会、委員会活動など、面倒に見える経験の中にこそ、自分の適性や価値観を知るヒントが隠れている。

大量経験の先にしか、自分の価値観を見つけることはできない。

目標が見つからない人は、まず考え込むよりも行動することが大切である。

さまざまな経験を重ねることで、「自分は何が嫌で、何なら続けられるのか」「何に価値を感じるのか」が見えてくる。

目標は、机の上で悩んでいるだけでは見つからない。

大量の行動と経験の中から、自分の進むべき道は少しずつ見えてくるのである。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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