医療機関や介護事業所は、一般企業と異なり、マネジメントの作用が乏しい組織も少なくない。
そのため、役割分担が曖昧となっている組織も多い。
また、院長や事務長などの経営層は、経費削減の理由から、できるだけ多くの役割を特定の個人に依頼する傾向がある。
その方が、役職手当を削減できるからである。
しかし、このやり方には相当な問題がある。

組織設計の原則の一つに、権限責任一致の原則というものがある。
これは、役割に与えられる権限の大きさは、責任と同じ量でなければならないという考え方である。
図の事例の漫画では、OT部門を統括する権限がないにもかかわらず、OTの人材育成という責任が生じている。
つまり、権限<責任という状況である。
責任を果たすために十分な権限がないため、取り組む前から「あきらめ」が生まれる可能性が高い。
また、権限がない状況でOT部門にPTが介入すれば、OTからの反発が生じることも当然予想される。
そのため、PTとOT双方に不満が生じ、従業員満足度も著しく低下するだろう。
「権限も与えずに責任を持て」という発言は、組織設計をまったく知らないマネジメントのド素人である。
権限を持っていない人に責任を負わせる行為は、上司の自己満足であり、担当者のやる気を軽視する悪魔の所業である。
権限と責任が一致していない組織では、成果が出ないだけでなく、人材も育たない。
なぜなら、担当者は自分の判断で動けず、常に上司や他部門の顔色をうかがうことになるからである。
その結果、主体性は失われ、改善提案も減り、組織全体に停滞感が生まれる。
人に責任を求めるなら、同時に意思決定できる権限も渡すべきである。
役割を与えることと、責任を押しつけることはまったく違うのである。
したがって、権限と責任を一致させることは、組織運営において極めて重要である。
あなたの職場はいかがであろうか。
権限と責任は一致しているだろうか。
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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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