老化を理解することが予防リハビリテーションの第一歩である

老化には二種類がある。

生理的老化
すべての人に、加齢とともに不可逆的に生じる老化である。身体機能、感覚機能、認知機能などは、程度の差こそあれ、加齢に伴って徐々に変化していく。これは人間が生きる過程で避けることのできない自然な現象である。

病的老化
疾患や障害、生活習慣の乱れなどにより、生理的老化が著しく加速した状態である。老化によって活動性が低下し、その結果として生活機能が低下していくことは一般的である。さらに、身体機能の低下だけでなく、認知機能の低下やさまざまな喪失体験を背景として、精神機能の低下が目立つようになることも少なくない。

喪失体験とは
体力や心身機能の低下による健康の喪失、子どもの自立、定年、退職、引退、配偶者や友人との死別などによる家族や社会とのつながりの喪失、定年や退職などによる経済的自立の喪失、さらに社会的地位や役割を終えたり失ったりすることによる、生きる目的の喪失などを指す。これらの体験は高齢者の心理面に大きな影響を及ぼし、意欲低下や閉じこもり、抑うつ傾向を招く要因となりうる。

ただし、こうした老化現象や喪失体験の影響には大きな個人差がある。生活習慣、既往歴、社会参加の状況、家族関係、価値観、そして個人の生理的特徴によって、その現れ方や進行速度は大きく異なる。同じ年齢であっても、心身機能や生活機能には大きな差がみられるのである。

また、老化現象は運動、栄養、睡眠、社会参加などによって大きく左右される。とくに病的老化は、早期から適切な介入を行うことで予防や進行抑制が可能である。フレイルやサルコペニアの予防、活動量の維持、他者との交流の継続は、健康寿命の延伸に大きく寄与する重要な視点である。

人間にとって老化そのものは避けられない。しかし、健康寿命の延伸やQOLの維持・向上という視点を持つことで、老年期の過ごし方や到達しうる生活の質は大きく変わる。単に寿命を延ばすのではなく、その人らしく生活できる期間をいかに長くするかが重要である。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、今後、予防領域に深く携わっていくことは間違いない。老化について積極的に学ぶことは、予防領域で活躍するための最低限必要な基盤である。老化の本質を理解し、身体・精神・社会面を総合的に捉える視点を持つことが、これからのリハビリテーション専門職に強く求められるのである。

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執筆者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
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