PT・OT・STの認定資格は必要か? 制度動向から考える取得の意義

現在、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会では、それぞれ専門性の向上を目的とした認定制度が設けられている。理学療法士では「認定理学療法士」「専門理学療法士」、作業療法士では「認定作業療法士」「専門作業療法士」、言語聴覚士では「認定言語聴覚士」に加え、2026年度からは「専門言語聴覚士」の新設も示されている。これらは各団体の定める研修、実績、審査などを経て付与される資格であり、専門職としての質保証や継続的な学習を促す役割を担っている。

一方で、2026年4月時点では、これらの認定資格そのものに対して診療報酬や介護報酬上の直接的な評価が広く制度化されているわけではない。したがって、資格取得の意義は現状では、直ちに報酬上の優遇を得ることよりも、自らの専門性を高め、対外的に学習歴や実践力を示す意味合いが中心であると言える。もちろん、資格を取得しなくても、高度な臨床力や教育力、研究力を身につける道はある。そのため、多くのPT・OT・STが「認定資格を取るべきか否か」で悩むのは自然なことである。

この判断を考える際の参考になるのが、看護師の特定行為研修制度である。かつて「特定看護師」という通称で語られることもあったが、現在の制度上の正式な位置づけは、「特定行為に係る看護師の研修制度」を修了した看護師である。これは、保健師助産師看護師法に基づき、あらかじめ医師が作成した手順書の下で、看護師が一定の特定行為を実施できる仕組みであり、単なる民間資格ではなく、国の制度として整備されている。

ここで重要なのは、この制度が必ずしも「認定看護師資格を持ち、5年以上経験した者だけ」に限定されていない点である。厚生労働省は、特定行為研修の受講対象として概ね3〜5年以上の実務経験を有する看護師を想定しており、日本看護協会の研修でも、認定看護師資格保有者に加え、一定の臨床経験を持つ看護師を受講対象としている。つまり、従来の認定資格がそのまま国家資格へ移行するという単純な構図ではなく、既存の専門性認証と国の制度設計が接続しながら、新たな役割が制度化されてきたと理解するのが正確である。

この経緯を見ると、専門職団体による認定制度は、現時点で報酬上の直接的メリットが乏しかったとしても、将来の制度改正や職能拡大の土台になり得ることがわかる。PT・OT・STの領域で、将来、看護師の特定行為研修修了者のように、より高度な役割や新たな制度上の位置づけが生まれるかどうかはまだ不透明である。しかし、国の政策、職能団体の動き、地域医療介護のニーズが重なれば、専門資格の位置づけが変わる可能性は十分にある。

だからこそ、認定資格を取るかどうかは、「今すぐ報酬で得か損か」だけで決めるべきではない。自分がどの領域で専門性を深めたいのか、将来どのような役割を担いたいのか、所属組織や地域でどのような価値を発揮したいのかを踏まえて判断することが重要である。そのうえで、国の施策や制度改正の方向性も見据えながら、自分の人生と仕事の戦略の中に資格取得をどう位置づけるかを考えるべきであろう。資格は目的ではなく、将来の選択肢を広げるための戦略的な投資として捉える視点が、これからますます重要になる。

キャリアデザインを体系的に学びたい方 → セミナー一覧はこちら
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

関連記事