リハビリ職種に学び直しが必要な時代へ 厳しくなる労働市場をどう生き抜くか

リハビリ職種の過剰供給、社会保障費の抑制圧力、医療機関や介護事業所の飽和などにより、リハビリ職種を取り巻く労働市場は今後ますます厳しくなっていくと考えられる。

実際、厚生労働省の需給推計では、理学療法士・作業療法士は将来的に供給が需要を上回る見通しが示されており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍に達するとの推計も示されている。

加えて、医療機関を取り巻く経営環境も厳しさを増しており、限られた財源の中で人件費や運営コストをどう最適化するかが大きな課題となっている。

そのため、これからのリハビリ職種には、単に資格を持っているだけではなく、労働市場を生き抜くだけの知性や能力が必要になる。

臨床技術だけでなく、対人支援力、言語化力、マネジメント力、多職種連携力、地域で価値をつくる力などが、これまで以上に問われる時代になっているのである。

現在、政府は社会人の学び直しに関する支援を強化している。

内閣官房は「三位一体の労働市場改革」の中でリ・スキリング支援を重要施策として位置づけており、厚生労働省はキャリア形成・リスキリング支援センターを通じて、個人や企業向けに無料相談や支援を実施している。

そもそも日本人は、一度、社会人になると、専門学校や大学などの教育機関で「学び直し」を受ける習慣が十分に定着してきたとは言い難い。

文部科学省の資料でも、社会人の学び直しは重要政策として繰り返し位置づけられている一方で、大学等のリカレント教育の活用はなお限定的であり、公開講座受講者数も近年は停滞傾向が示されてきた。

また、内閣府資料では、日本のリカレント教育はOECD諸国と比べて柔軟性が低い傾向が示されている。

「学び直し」が習慣化されていない理由は、次のようなことが考えられる。

終身雇用の神話を信じている人が多い
国家資格取得者は永遠に雇用があると信じている
好きなことを仕事にしていくというマインドが少ない
我慢して仕事をすることを美徳と考えている

これらの理由から、あえて違う世界に飛び出して勉強をするインセンティブが作用しにくかったのだと考えられる。

これまでの日本では、ひとつの組織の中で長く勤め続けることが安定につながるという価値観が強く、資格を取れば一定の雇用が続くという前提も共有されてきた。

しかし、人口構造、医療需要、介護需要、地域差、組織経営の変化を考えると、その前提はすでに揺らいでいる。

しかし、現実は次の通りである。

既に終身雇用制は崩壊している
国家資格取得者も余りつつある
我慢して仕事をしているだけでは、心身を損ないかねない

特にリハビリ職種においては、資格そのものの希少性が今後さらに低下していく可能性がある。

理学療法士・作業療法士の需給推計はその象徴であり、「資格を持っているだけで安泰」という時代ではなくなっている。

また、働く個人にとっても、ただ耐えながら仕事を続けることは持続可能とは言えない。

自分の市場価値を高め、自分のキャリアを主体的に設計していく視点が不可欠である。

よって、リハビリ職種における学び直しの必要性は高い。

大学院でより専門性を高める勉強を行う
専門学校で他の医療資格を取得する
社会福祉士や公認心理師など、リハビリテーションと関連する資格を取得する
財務会計やマネジメントに関する学びを深める
デジタル、AI、データ活用、地域包括ケア、在宅支援など、今後の需要が見込まれる分野に踏み出す

これらは現実的な学び直しの選択肢である。

しかも、現在は教育訓練給付やリスキリング支援策が以前より整っており、学び直しは「個人の気合い」だけに頼るものではなくなってきている。

制度を知り、使い、働きながら学ぶことが、これからの時代の基本になっていく。

日本人の働き方改革は、学び方改革の一面を持つ。

働きながら自分を成長させ、どんどん新しい自分になるために、学びを深めていく。

今後のリハビリ職種に求められるのは、職場に適応することだけではない。

変化する制度、地域ニーズ、利用者像、組織課題に応じて、自ら学び、自ら役割を広げていく力である。

その意味で、学び直しは一部の意識が高い人だけのものではない。

むしろ、労働市場が厳しくなる時代において、自分の専門性と可能性を守り、広げるための現実的な戦略である。

そんな時代に、すでに突入している。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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