リハビリ職種がキャリアに迷う原因は「自己概念」のあいまいさにある

自己概念とは、「私はこういう人間だ」というセルフイメージのことである。

この自己概念は、人生において非常に重要である。

なぜなら、良い自己概念を持つか、悪い自己概念を持つかによって、その人の選択や行動、さらには人生そのものが大きく左右されるからである。

自分に適した職業と出会い、それを選択していくためには、自分自身の興味・関心・能力・価値観について、自ら認識しておく必要がある。

どのような仕事に魅力を感じるのか、どのような場面で力を発揮しやすいのか、何を大切にして働きたいのかを理解していなければ、職業選択は他人任せになりやすい。

職業やこれからの進路を選択し、実行することは、単に仕事を決めることではない。

人生の方向性そのものを選択することである。

そのためには、自分の人生における指針が必要であり、その指針は自分の興味・関心・能力・価値観によって形づくられていく。

たとえば、次のような問いは極めて重要である。

自分はどのような仕事であれば、自分らしさを表現できるのか。
自分は仕事を通じて、どのような社会貢献ができるのか。
自分は人生や仕事において、何を大切にしていきたいのか

これらの問いを日々考え続けることで、少しずつ見えてくる答えが「自己概念=セルフイメージ」である。

特に、仕事に関する自己概念は「職業的自己概念」と呼ばれている。

リハビリ職種においては、この職業的自己概念がとりわけ重要である。

なぜなら、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はいずれも国家資格でありながら、活躍できる領域や役割が非常に幅広いからである。

急性期、回復期、生活期、在宅、介護、教育、管理、地域づくりなど、多様な選択肢が存在する。

その中で、自分がどのような対象者に、どのような価値を提供したいのかを明確にすることは、日々の実践と将来のキャリアを一貫させるうえで欠かせない。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という同じ職種を選んだとしても、全員が同じ職業的自己概念を持っているわけではない。

人それぞれに異なる自己概念があるため、同じ資格を持っていても、仕事を通じて達成したいことや獲得したい成果が異なるのは当然である。

ある人は、目の前の利用者の生活機能を高めることに強いやりがいを感じるかもしれない。

ある人は、後輩育成や組織づくりに魅力を感じるかもしれない。

また別の人は、地域で暮らす高齢者を支える仕組みづくりや、専門性の普及、教育活動に価値を見出すこともある。

これらはすべて、職業的自己概念の違いによって生まれるものである。

職業的自己概念が明確になっている理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、自分が働きたい領域や取り組みたい仕事内容が明確である。

そのため、日々の選択に迷いが少なくなり、自分の人生に対して肯定的なキャリアデザインを行いやすい。

どの職場に行くのか、どのような学びを深めるのか、どのような役割を引き受けるのかといった判断に軸が生まれるからである。

一方で、職業的自己概念が明確でない場合は、周囲の環境や他者の期待に巻き込まれやすくなる。

自分が本当に望んでいない仕事ばかりが増えたり、何となく異動や転職を繰り返したり、目の前の業務に追われるだけの毎日になったりする。

その結果、仕事への納得感が得られず、自分の人生に対して否定的な感覚を持ちやすくなる。

リハビリ職種は、専門職であるがゆえに、目の前の業務をこなす能力だけで評価されがちである。

しかし、本当に大切なのは、単に仕事ができることではなく、自分がどのような専門職として生きていきたいのかを言語化できることである。

技術や知識を高めることは重要であるが、それをどの方向に使っていくのかが定まっていなければ、キャリアは場当たり的なものになりやすい。

だからこそ、リハビリ職種は自分自身に問い続ける必要がある。自分は何にやりがいを感じるのか。

どのような対象者に貢献したいのか。どのような働き方を通じて自分らしさを発揮したいのか。

そして、どのような価値を社会に届けたいのか。こうした問いを深めることは、単なる自己分析ではない。専門職としての生き方を磨く営みである。

自己概念は、一度決めたら終わりというものではない。経験を重ね、役割が変化し、出会う人や環境が変わることで、少しずつ更新されていく。

若手の頃に描いていた理想と、中堅以降に見えてくる役割は異なることもある。

しかし、それでよいのである。

大切なのは、その時々で自分自身と向き合い、自分の職業的自己概念を確かめ直すことである。

リハビリ職種としてよりよいキャリアを築きたいのであれば、資格やスキルだけでなく、自分は何者であり、何を成し遂げたいのかを考える時間を持つべきである。

自己概念を磨くことは、自分らしいキャリアを築く土台であり、人生を主体的に選び取る力そのものなのである。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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