活動・参加だけでは不十分 リハビリ職種に今あらためて求められる動作分析力

理学療法士の専門性は基本的動作能力の改善にあり、作業療法士の専門性は応用的動作能力の改善にある。

これは法律上も位置づけられている視点であり、両者の専門性を考えるうえで出発点となる重要な考え方である。

2015年度介護報酬改定以降、利用者の活動や参加を重視する流れは一段と強まった。

それに伴い、生活の広がりや社会参加に目を向けるリハビリ職種が増えてきたことは非常に意義深い。

本来、リハビリテーションとは、心身機能の回復だけで完結するものではなく、その人らしい生活や役割の再構築まで視野に入れる営みである。そう考えれば、この変化はまさにあるべき方向である。

一方で、現場では心身機能への関わりと、活動・参加への関わりのバランスに偏りが見られることも少なくない。

活動や参加を重視するあまり、その基盤となる動作の質や構成要素への視点が弱くなっている場合がある。

活動・参加は重要である。

しかし、それを支える身体の使い方や動作の仕組みを十分に捉えられなければ、表面的な関わりにとどまる危険がある。


(無断転載禁止)

そもそも理学療法士・作業療法士は、基本的動作能力や応用的動作能力を的確に捉え、分析できなければならない。

そこが曖昧なまま活動や参加だけを語るのは、本質から外れてしまう。

なぜなら、生活場面で生じる課題は、最終的には具体的な動作として現れるからである。

立ち上がる、歩く、座る、手を伸ばす、物を操作する。

こうした一つひとつの動作を読み解けなければ、利用者の可能性を十分に引き出すことはできない。

近年は、動作分析が十分にできないまま支援に入るリハビリ職種が増えていることも懸念される。

動作を見ても、どこに問題があり、どこに代償があり、どこに改善の余地があるのかを整理できない。

その結果、利用者が本来持っている力を見逃し、必要以上に能力を低く見積もってしまうことにつながる。

これは利用者の自立や役割の拡大にとって大きな損失である。

理論的に見れば、活動や参加は心身機能と切り離されたものではない。

ICFの考え方が示すように、心身機能・身体構造、活動、参加は相互に影響し合う関係にある。

つまり、活動や参加を進めるには、その土台となる動作の理解が必要であり、逆に動作の改善も活動や参加の文脈の中で意味づけられなければならない。

どちらか一方だけを見ていては、支援の質は高まらないのである。

動作を構成するのは各関節の運動である。

そして各関節は、大きな関節から小さな関節まで連続した働きの中で成り立っている。

したがって、リハビリ職種には、活動・参加という生活全体の視点と、動作という中間レベルの視点、さらに関節運動や身体の細かな構成要素にまで目を向ける多層的な理解が求められる。

この包括性こそが、他職種にはない大きな強みである。

活動や参加に強い関心を持つことは大切である。

しかし、その実践が真に価値あるものになるのは、動作分析という確かな土台があってこそである。

反対に、動作分析に優れていても、それが生活や社会とのつながりに結びつかなければ専門性は十分に発揮されたとは言えない。

必要なのは、どちらか一方ではなく、両者を往復しながら統合して捉える力である。

動作分析ができる人が活動・参加に向き合う。

活動・参加を見据えられる人が動作分析にも深く踏み込む。

そのような姿勢が当たり前になってこそ、リハビリ職種の専門性はより社会に伝わり、利用者に対しても真の価値を提供できる。

活動・参加と動作分析を分断しないこと。そ

れが、これからの時代に求められるリハビリ職種の本質であり、未来を切り拓く条件である。

運動器疾患のリハビリテーションに関して学びたい方 →セミナー一覧 投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。
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