医師が動かないリハビリ現場を変える:非協力を「仕組み」で解決するマネジメント

筆者がコンサルティングを行うリハビリ部門では、「医師の非協力」は頻出するボトルネックである。

特に、老人保健施設、医療療養病棟、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションでは、医師がリハビリテーション領域への関与を最小限に留めるケースが少なくない。

近年は、老健における在宅復帰、通所・訪問リハにおける自立支援、医療療養病棟における重症者対応などが進み、リハ専門職だけでは改善が難しい利用者が増えている

多疾患併存、認知機能低下、服薬調整、合併症リスク、栄養・嚥下、生活背景の複雑化が重なれば、チーム医療の質がアウトカムを左右する。

その中で医師は、診断、予後予測、治療方針の決定という点で、最重要のキーパーソンである。

医師の一言は、利用者・家族の理解と納得、スタッフの方針統一、リスク管理の精度に直結する。つまり、医師の関与は「付加価値」ではなく、ケアの中核機能である。


(無断転載禁止)

「何をすればよいかわからない」は
理由ではなく課題設定である

医師がリハビリへの関与を避けるとき、しばしば「自分が何をすればよいかわからない」という説明がなされる。

しかし、これは本質的には役割と期待値の不明確さというマネジメント課題である。

マネジメント理論で言えば、これは「役割曖昧性(Role Ambiguity)」が生み出す典型的な現象だ。

役割が曖昧な状態では、人は責任回避や関与低下に傾きやすい。

したがって必要なのは精神論ではなく、役割・行動・判断基準を言語化し、合意形成することである。

医師に求めるのは
「リハ専門医の高度な役割」ではない

ここで強調したいのは、医師に求めるのはリハビリテーション専門医としての高度な実践ではないという点である。

必要なのは、「一患者を診る」という基本姿勢である。

診察、予後予測、治療方針を家族に丁寧に説明することは、医師の専門性の中核である。

さらに、医師自身で不明な点があれば、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護職に確認すればよい。

これは能力の不足ではなく、情報連携の不足に過ぎない。

この姿勢が徹底されるだけで、利用者・家族の不安は大きく軽減され、納得感が増し、結果として満足度も向上する。

加えて、スタッフ側も方針の軸が定まり、介入の一貫性が高まる。

マネジメントで実現すべきは
「協力」ではなく「仕組み」である

医師の協力を「善意」や「個人の姿勢」に依存すると、再現性はない。

組織論の観点では、成果は個人能力よりも構造(仕組み)とプロセス(運用)に規定される。

したがって、目指すべきは「医師が協力してくれる職場」ではなく、医師が自然に関与せざるを得ない業務設計である。

具体的には、医師に求める行動を最小限に絞り、頻度・タイミング・インプット情報・アウトプット(説明内容や指示)を定型化し、チーム全体で運用できる状態にする。

リハビリテーションは医師だけで行うものではない。

だが同時に、医師が関わらないリハビリテーションもまた成立しにくい。

この当たり前を「個人の努力」ではなく「マネジメント」で実装することが、今の現場に求められている。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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