地域包括ケアの前に、事業所包括ケアである

多くの医療・介護事業所において、「地域包括ケアに取り組まなければ利用者が確保できない。他の事業所との連携が大切だ」と叫ばれている。

医療・介護の連携の重要性が叫ばれて久しいが、現実にはその連携は十分に機能していない。

筆者は、そもそも医療・介護事業所内において包括ケアや連携が構築されていないことが、地域包括ケアの推進を阻む最大の要因であると考える。

特に、現場の実態を顧みないトップダウン型の経営者は、現場のケアやリハビリテーションの全体最適には関心を示さず、外部との連携の重要性ばかりを強調する傾向がある。

これは最悪の構造である。

事業所内で包括ケアが実践されている事業所でなければ、地域包括ケアの本質を理解することはできない。

書類や口頭での申し送り、表面的な会話の羅列に終始するカンファレンスやサービス担当者会議は、包括ケアとは言えない。

包括ケアとは、各専門職が利用者の目標達成に向けて専門性をぶつけ合い、協議の中から生まれた知恵を実際の支援に活かすことである。

このような本質的な取り組みを実践している事業所は、非常に少ない。

全体の1割にも満たないのではないか。

多くの事業所が、地域包括ケアの意味を正しく理解していないのが実情である。

自らが所属する事業所において、果たして包括ケアが実践されているかを問い直す必要がある。

もし実践されていないのであれば、やるべきことは明確である。

自らが動き、包括ケアのキーパーソンとなることで、現場から変革を起こすことが可能である。

地域包括ケアは、制度や仕組みではなく、現場の実践と意志によって形づくられるものである。外部との連携を語る前に、まずは足元のケアを見直すべきである。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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