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ハンガリー人が驚いた「日本の高齢化」–医療ガバナンス学会

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【筆者:吉田いづみ・Semmelweis(センメルワイス)大学医学部生】

私はハンガリーで医学を学んでいる。先日、共通の友人を通じて、30代のご夫妻と出会った。ご主人はハンガリー人で、IT関係の仕事をしている。奥さんはハンガリー育ちのベトナム人で、デザイナー兼アジア料理店の経営者だ。この春に結婚をし、日本の伝統的なデザインと日本料理に憧れ、9月に1カ月ほど新婚旅行で日本を訪れたという。東は東京、西は広島、北は金沢までを旅し、「お気に入りは白川郷だ」と楽しそうに話していた。デザイナーの奥さんは、「白川郷の合掌造りの家や集落の並びに一目惚れした」と言っていた。着物も購入し、とても充実した新婚旅行だったようだ。

そんな中、2人が顔を曇らせつつ話し始めたのは、日本の高齢化問題だった。ご主人は、「はっきり言って悪いけど、日本の高齢化は顕著だと思う」と言っていた。「どこに行っても老人ばかりで、若い人をまったく見かけない。 タクシードライバーも清掃員も力仕事もみんな年寄りがしている。田舎に行けば若い人はゼロ、都心にはベトナム人やフィリピン人のコンビニ店員ばかり。それなのになぜ、日本は移民を受け入れないのか?」と不思議がっていた。

そこで私が、「日本の地方に住む若者の多くは大学や仕事を機に都心に集まり、高齢化の進んだ日本では将来年金も期待できないため、高齢になっても自ら働くしかない」と現状を伝えると、意外なことに「ハンガリーも同じだ」と言っていた。

ハンガリー国民の「期待」

ハンガリー人にとって自国での収入は多くなく、隣のオーストリアに行けば給料は約3倍になる。それだけに、多くの若者はイギリスやドイツに働きに出る。人口1000万人足らずのハンガリーから10万人近くがイギリスに移住しており、そのためかロンドンは「ハンガリーの第2の都市」とも言われている。

現に私の在籍するセンメルワイス大学では、ハンガリー語コースは6年間で1000万円近い授業料が免除されるが、その代わり、卒業後はハンガリー国内の医療機関で従事することが義務付けられている。もちろん卒業後国外に出て働き、授業料を返済するという方法もあるが、海外就職志望のハンガリー人は最初から授業料を払い、英語コースやドイツ語コースで学んでいる。もちろん彼らの就職先のほとんどはドイツかイギリスだ。

また、政府総債務残高(対GDP比、2016年)を見てみると日本の232%に対し、ハンガリーは74%だ。ハンガリーの財政状況は、日本よりはるかにいい。ところが、ハンガリーでも将来年金は期待できないと言われている。

ハンガリーの年金制度は日本と同様に国民年金と所得比例年金(日本の場合は厚生年金に該当)が存在する。しかしリーマンショック後、ハンガリーの経済成長率は1.95%にとどまり、国民年金を約50%に縮小せざるを得なくなり、定年退職年齢が62歳から65歳まで引きあがってしまったためだ。

そのため、ハンガリーの高齢者は仕事を2つも3つも掛け持ちし、死ぬまでのお金を何とか稼いでいる。大学教授の多くでさえ、大学の仕事だけでなく家庭教師や不動産などでなんとか収入を増やしている。

そうした状況の中でハンガリー人が思うのは、「移民を受け入れればもっと楽な生活ができるのではないか」ということだ。産業が活性化して景気がよくなることへの期待なのだろうか。実際、移民を受け入れることに対する反対意見の中では、街の風土や文化が変わり、治安が乱されることへの恐怖の方が大きく、労働の機会を奪われるかもしれないことに関する反発は、あまり目立ってはいない。

来春の首相選挙争点も「移民問題」

現在、ハンガリーの高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は18.2%であるのに対し、日本は27.3%であり、日本は高齢化の点では世界第1位で、2015年には30%を超えるとも予測されているほどだ。

しかし、日本の移民政策はまったく整備されていない。そもそも安倍晋三首相は「わが国は移民政策をとらない」と明言している。かろうじて、自民党国際人材議員連盟によって毎年20万人の移民受け入れや、移民の大量受け入れの本格的な検討を開始したものの、対象となる移民は高度な専門性や技術を持つ外国人に限定されており、移民政策がうまく進んでいるようには見えない。移民率(総人口に占める移民の割合)は、ハンガリーが3.6%(主にベトナム、タイ、フィリピン)であるのに対し、日本はわずか1.7%(主に中国、か韓国、朝鮮)にとどまっている。

ベトナム戦争後、ハンガリーは、数百名のインドシナ難民を受け入れたと言われている。ハンガリーを含むEU(欧州連合)諸国では、仕事や学業を含め8~10年ほど滞在すれば永住権を取得できるという制度がある。多くの東南アジア人は、こうして永住権を手に入れ、タイマッサージ店や中華料理店を開き、生計を立てている。実際に、冒頭で触れた、新婚旅行で日本を訪れたハンガリー夫婦の奥さんもそうだ。8歳の頃、インドシナ難民の知人を頼ってハンガリーにわたり、それから20年以上経つ。現在はアジア料理店を経営し、ブダペストで人気のレストランとなり、チェーン店まで展開している。移民が成功したケースだ。

現在、シリア難民問題も含め、ハンガリーは移民の受け入れに対し厳しい姿勢をとっているものの、高齢化社会を助ける一番の近道は「移民の受け入れ」だと解釈されている。これはハンガリー国民も理解はしているものの、国家色が変わることを恐れ、躊躇している状況である。そんなハンガリーも来春には首相選挙があるが、国民の注目する論点は、やはり「移民受け入れか否か」になりそうだ。

医療ガバナンス学会 広く一般市民を対象として、医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から解決し、市民の医療生活の向上に寄与するとともに、啓発活動を行っていくことを目的として設立された「特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所」が主催する研究会が「医療ガバナンス学会」である。元東京大学医科学研究所特任教授の上昌広氏が理事長を務め、医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」も発行する。「MRICの部屋」では、このメルマガで配信された記事も転載する。

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(2017年12月8日フォーサイトより転載)
Source: ハフィントンポスト

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genki

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 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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