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キンボールって何? 大玉転がしでもバレーボールでもない「新しいスポーツ」の素顔

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「オムニキン、ピーンク!」

こんな不思議なかけ声が飛び交うスポーツがあることをご存じだろうか。

その名も「キンボール」。日本ではまだあまりなじみのないスポーツだが、実は2001年から2年に1度、ワールドカップ(W杯)が開かれており、9回目となる今年の開催地はアジア初となる東京だった。

大会は10月31日~11月5日にかけて中央区立総合スポーツセンターで行われ、優勝は男女ともにカナダ、日本は男女ともに準優勝という結果で幕を閉じた

また今回初の日本開催にあわせて、大会前後には関連イベントが企画された。そのひとつが、中央区立の全16の小学校と、W杯に出場する11の国と地域(中国、香港、ベルギー、スペイン、フランス、デンマーク、チェコ、スイス、シンガポール、カナダ)の選手団との国際交流イベントだ。

中央区立明石小学校とフランス選手団との交流会で通訳ボランティアをした体験をもとに、「ニュースポーツ」「スロースポーツ」などとも形容されるキンボールの多面的な魅力に迫りたい。

キンボールってどんなスポーツ?

キンボールスポーツ(以下キンボールと略)は、1986年にカナダ・ケベック州で産声を上げた。当時体育教師だったマリオ・ドゥマース氏が考案し、日本には1997年に紹介された。

4人1組の3チーム(ピンク、グレー、ブラックに色分けされることが多い)が、直径122cm・重さ約1kgのボールを打ち合うというのが基本的なルールだ。大玉転がしの玉ほどの大きさ、バランスボールほど軽いボールを使った、バレーボールに似たスポーツというとイメージしやすいだろうか。

しかしキンボールはもちろん、大玉転がしともバレーボールとも違う。

特徴のひとつがその打ち合いの仕方だ。ボールを相手チームめがけて叩く「ヒット」は、必ず3チームのうちの1チームが行う。その際に必ず、例えば「オムニキン、グレー!」とコールして、自チーム以外のどちらのチームがレシーブするのかを指定する。

かけ声の「オムニキン」は、「すべての」を意味するオムニと、「キネスシス(運動感性)」の略語であるキンを組み合わせた造語。「すべての人が楽しめるスポーツ」という思いが込められているという。

明石小学校とフランス選手団の交流会

10月30日、中央区立明石小学校の4・5年生とフランス選手団11名、および日本代表選手2名との交流会が行われた。

最初「4・5年生」と聞いて、少し不安がよぎった。「最近の子はドライと聞くから、4・5年生くらいともなると、外国人や大きなボールを使ったスポーツくらいでは、そんなには大きな反応は期待できないかもしれない……」

23区の端に住む筆者からすると、中央区の小学校はどことなくハイソなイメージ(事前に調べると校舎もとてもきれい)。交流が冷ややかに進んだらどうしようと、詮無いことを考えながら小学校の門をくぐったが、予想は大きく外れた。

まず体育館での歓迎セレモニーから、児童のパワーに圧倒された。選手がそれぞれ自己紹介で名前と好きな食べ物を言っただけで、子どもたちは一言一句に「へぇー!」「あ~!」と大きな反応。日本代表選手の2人も英語で答えるなど場を沸かせてくれ、初めての通訳業務に戸惑う筆者は助けられっぱなしだった。

歓迎セレモニーで自己紹介をするフランス人選手の様子。右端が筆者(撮影者:明石小学校)。

いよいよ目玉である、ゲーム形式でのキンボール交流。最初に選手たちがお手本としてデモンストレーションを披露すると、子どもたちだけでなく、教員側からも歓声が上がった。

体育館中に響く、ヒットしたときの「バシーン」という力強い音、時にはつま先をも使うレシーブ技術の妙、ヒットとレシーブが目まぐるしく変わるスピード感。

筆者自身、トップレベルの選手たちの技を実際に目の当たりにして、それまで抱いていたキンボールのどことなくゆったりとしたイメージが取り払われ、目が覚める思いだった。

ゲーム形式での交流では通常の1チーム4人というルールから、ハンデとして児童のチームを6人、フランス人選手のチームを3人とし、児童の2チームとフランス人の1チームで争われた。

子どもの細腕では3人でもボールを支えるのがやっとなのに対し、大人のフランス人選手は1人でもボールを軽々と持ち上げているのを見て、ギャラリーもどよめいた。

短い時間だったが、実際にゲームを通して交流しているときが子どもたちも選手も一番楽しそうで、試合の終わりに感想を聞くと「楽しかった」「すばらしかった」と額の汗を光らせながら笑顔で答えてくれた。

最後には全員で記念撮影。使用したボールは小学校にプレゼントとして贈られた(撮影者:明石小学校)。

交流会は他にも、日本の伝統的なおもちゃを児童が紹介し一緒に遊ぶコーナー、児童の歌や踊りの披露、W杯での活躍を祈願する激励の言葉、ふれあい給食など盛りだくさんの内容だった。

今回何より驚いたのは、予想に反する子どもたちの積極性だ。「日本食で何が好きですかって何て言うの?」「お箸上手ですねって何て言うの?」「2020年の東京オリンピックに来ますかって何て言うの?」等々、嬉しい質問責めにあった。

また選手からも「この子たちは何歳くらいなの?」「子どもたちが着ているユニフォームみたいなもの(体操着のこと)はなに?」「『ごちそうさまでした』ってどういう意味?」とさまざまな角度から質問が飛び出し、冷や汗をかきながらも良い経験をさせてもらった。

児童がけん玉の遊び方を選手たちに説明している様子。他にもベーゴマ、メンコ、お手玉、羽根つき、将棋、折り紙などが紹介された(撮影者:明石小学校)。

キンボールというスポーツの射程の広さ

「オムニキン」というかけ声には、「すべての人が楽しめるスポーツ」という思いが込められていると先ほど書いた。

少し堅苦しい話をすると、キンボール成立の背景には、1980年代当時すでに社会問題になっていた、若者の無気力・無関心・無感動の「三無主義」からの脱却、競争原理や二者択一の原理だけに縛られないスポーツの普及、といったものを目指す動きがあったとされている(参照:酒井青樹・峯岸純子『スロースポーツに夢中!』岩波書店、2004年)。

そうした背景もあり、公式大会のルールとは別に、参加者の年齢や性別・会場の広さなどに応じてルールを柔軟に変更できることも、キンボールの大きな特徴となっている。

例えば高齢者の方とプレイするときはヒットをワンバウンドにする、耳の不自由な方が参加するときは、コールの際にピンクだったら唇を、ブラックだったら髪の毛を指差し、グレーだったら手でネズミの形をつくることで声の代わりに指定チームを伝える、といったアレンジ方法があるようだ。

最近では大手広告代理店・電通の澤田智洋氏が考案した「ゆるスポーツ」といったコンセプトをはじめとして、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた「1億総スポーツ社会」を目指す動きが注目を集めている。

勝ち負けを第一に考えない、どんな人でも参加できるよう工夫を凝らす、ルールに縛られない柔軟さを持つ、といったキンボール発足当初の理念、そして現在でも広く普及している形態のひとつは、間違いなくこうした動きとも親和性のあるものだろう。

しかし忘れてはいけないのは、キンボ―ルは同時に、トップレベルの選手が日々技術・戦略の向上を図るれっきとしたプロスポーツに今や成長しているということだ。

2015年にスペインで開かれた第8回大会の様子を収めた動画を見ると、それは一目瞭然。この大会で日本チームは、男子が優勝、女子が準優勝という素晴らしい成績を収めた。日本男子チームが優勝カップを掲げるシーンなど、胸を熱くさせるものがある。

キンボールは誕生から約30年とまだ歴史が浅いにもかかわらず、気軽さやとっつきやすさ、遊戯的な側面を保ちつつ、同時にプロスポーツとしての地位を確立しつつある。

気の合う仲間とゆったりやるもよし、独自ルールを編み出すもよし、トップレベルのバチバチの試合を観戦するもよし、W杯出場を目指すもよし。

すべての関わり方を包み込んでしまうような懐の深さが、キンボールにはある。

取材協力:中央区区民部スポーツ課、中央区立明石小学校、日本キンボールスポーツ連盟(五十音順、敬称略)

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Source: ハフィントンポスト

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著者紹介 著者一覧

genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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