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性行為が「お互いのため」になるように。伊藤詩織さんと考える、性暴力を防ぐための教育とは

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ノンフィクション作品「Black Box」(文藝春秋)で、元TBS記者から「レイプ被害を受けた」とフルネームで告白し、性暴力などの犯罪に”甘い”日本社会を描き出した伊藤詩織さん。彼女は「日本の決まりきったレール」から離れた場所から社会を見つめてきた。

中学時代は一時期病院で過ごし、その後アメリカの高校に留学。昼夜問わずバイトを掛け持ちしてお金をため、ニューヨークの大学でジャーナリズムを学んだ。バックパックを背負い、世界中も旅した。

伊藤さんは、性暴力についても、日本の”外からの視点”を大事にする。

「性行為は、相手が嫌がっていないか、同意をしているのか、シンプルに考えることから始めないといけない。海外では『どういうセックスがお互いのためなのか』を学校で教えている」と、ハフポスト日本版のインタビューに語った。

インタビューの前編「『私は、被害者Aではない。伊藤詩織です』元TBS記者のレイプ疑惑を顔出しで公表した理由」はこちら

——日本では2017年6月に性犯罪の厳罰化をめざす改正刑法が成立しましたが、性犯罪の被害者を社会全体でサポートする体制は不十分だと感じます。

今年(2017年)の夏、性暴力に対するスウェーデンの取り組みを取材しました。他国と比べてレイプの届出をしやすい環境ということもあり、2013年には人口に対し最もレイプの届出率が多かった国です。しかし、日本と同じく最終的に有罪になるケースは極めて少ないです。

性暴力が密室で起きたり、被害を証明できなかったりする難しさはどこも同じ。ただ、スウェーデンでは警察だけでなく、社会全体のサポートが整っていると感じます。レイプの緊急センターがあり、24時間365日の受け入れ体制で、まずは治療をしてくれる。

レイプキットによる検査は被害から10日まで可能で、その結果は6ヶ月間保管されます。被害者は、まずはここで検査、治療、カウンセリングなどを受け、一連の処置が終わった後に、警察へ届けを出すかどうかを考えることができるのです。

事件直後は、心身ともにダメージを受けているため、判断に大変な負担がかかります。私の場合も何らかの原因により痛みがありました。意識が戻るまでの間の記憶がなく、何があったのか大変混乱しました。警察へ行くまで実際に5日ほどかかりました。

(スウェーデンは)こうした制度のおかげで、事件に遭った人は、すぐに警察に行かなかった自分を責めたり、「どうしてすぐに警察に届け出なかったのか」と周囲から責められたり、「これでは何もできない」と当局から突き放されたりしなくて済むのです。

——受け入れ体制が整っていますね。

自分の受けた心や体の傷に対しては、ひとり一人違う受け止め方や向き合い方があります。その人がその後どう判断しようとも、こうしたセンターがあるおかげで「被害者」という立場に置かれることなく、ニュートラルな立場で、まずは治療を行える。とても重要なことだと思います。

初期段階の受け入れ方が変わるだけでも、性暴力を経験した人が救われる。信じてケアをしてもらえるだけで、傷の癒え方も、受け入れ方も大きく変わってくると思います。

——被害を受けた直後は、最初にどこに行ったら良いのか分からない人も多いと思います。元TBS記者もその後、(伊藤)詩織さんに仕事関係のメールを送っている、と本で書かれていました。

どう対応したら良いのか、何が起こったのか、自分が間違っているのか、すごく混乱すると思います。私も、最初どうしたら良いか分かりませんでした。後日分かったのは「すぐに警察に行かなきゃいけなかった」ということ。ただ、それはものすごく大変ですよね。

性犯罪の加害者は、”知り合い”が多いので、「犯罪だ!すぐに警察だ」と思えない。知り合いが急に犯罪者だなんて考えられないですよね。まずは戸惑うし、怖い。私も最初は「安全な場所に行こう」としか思えなかった。

被害を受けた後、暴力被害を支援するNPOに電話したのですが、「面接に来て」と言われ、驚きました。動ける状態ではないんです。

まず緊急に行わなければいけないのはレイプキットを使って被害の実態を検査すること、そして医療的な手当が必要な場合はすぐに処置をすること。

性暴力被害者支援のワンストップセンターを増やしていくことは素晴らしいと思いますが、スタッフの方にもある一定の教育を提供する必要があります。いくらセンター設立のために資金を使っても、現場の人の理解がなければホットラインの意味がありません。

——性犯罪に対する教育は大事ですね。

先ほど言ったような、サポートする方々の教育もそうですが、もっと根本的なところから変える必要もあります。

たとえば、学校の性教育。

私が覚えている限りだと、クラスで男女に分かれて、女子には生理のことや、どうやって子どもができるのか、あるいは「感染症は怖いからコンドームをつけましょう」ということだけを教えられる。(性行為の)合意やセックスのことについては詳しく教えてくれません。

その一方、インターネットで誰でも簡単にアクセスできるのは、アダルトビデオ(AV)の動画などです。この中には暴力的な行為を含む、様々な情報が溢れており、誤った性行為の情報を得てしまう可能性があります。

「このような性行為は相手を傷つける可能性がある」「これは暴力行為になりかねない」と相談の出来る人や、そのような情報を得られることが大切だと思います。

——海外は違うのですか。

スウェーデンで、「男性が性暴力を防ぐ」というモットーの団体が、学校を回る活動をしています。ポップスターのようなグループを作って教育できる音楽を提供し、コンサートをしながら、ちょっと頼れるお兄さんのような存在が「どういうセックスがお互いのためなのか」を教えています。

話しやすい、真似したいと思える雰囲気を作って、効果的に教育をしていました。お互いのコミュニケーションの大切さ、何が性暴力になるのかを学校で教えることは大事なことです。

いくらタブー視しても、みんなにそれぞれ性があるわけですし、自然なことで隠す必要は全くない。根本的なことから話し合える、性暴力の問題とも向き合えることが大切だと思います。

——たとえば朝日新聞の記者などに向けて社内で作られた「事件の取材と報道 2012」(朝日新聞出版)では、「性犯罪の被害者は、匿名を原則」とされています。被害者が実名報道を望む場合を例外としてもあげていますが、メディア側も「被害者のことは隠すべきだ」と思考停止しているのかもしれません。

かわいそう、という配慮なのかもしれませんが、「表に出るべきでない」と最初から決めつけられているような気がします。

アメリカの性犯罪の報道では、被害者が隠されない例もあります。私は、日本のあるテレビ局に取材をされましたが、最初からカメラのアングルがずっと手元を映しているのです。顔を映さない。違和感がありました。

私に起きたことは誰にでも起こり得ることで、話し合わないと意味がない。匿名の「被害者A」では遠い話になってしまうと思い、私は実名を出しました。

——ジャーナリストとして、性暴力というテーマにはどう向き合っていきますか。

性暴力のトピックについて2017年5月に東京の司法記者クラブで記者会見をして以来、様々な発信をしてきました。その一方で、「私はジャーナリストであって、アクティビスト(活動家)じゃない」と思い、仕事に復帰しようと次の取材に取り組もうとしましたが、結局は伝えることが仕事なので、この先も機会があれば性暴力のテーマをより考えるような取材をしたいです。

もちろん、他のテーマも関心があります。日本の中では、コミュニケーションの問題が、現代の色々な課題につながっている、と思っています。

昨年はずっと孤独死の取材をしていました。高齢社会の問題だけではなく、コミュニケーションの問題だと感じました。常に何かを取材をしていると、結局行き着くのがコミュニケーションや人とのつながりについて。テクノロジーが発展している中、その溝を考えていかなくてはいけないですね。

(レイプ疑惑を報じた)週刊新潮の記事が出る前は、コロンビアのゲリラの取材をしていました。戦場では男も女も関係ない。女性も戦わなければいけない。男性もキャンプに戻ったら炊事をしなければいけない。ある意味「男女平等」でした。そうしたことは現地に行って見ないとわからないですよね。

自分の中では、(本来のジャーナリストとしての)自分の仕事に戻りたかったですし、これ以上、性暴力の件について話したくないという気持ちも、どこかにありました。

ただ、本当に自分が伝えたいことが伝わったのかというと、会見では一部の言葉を抜粋されたり、インタビューを受けても100%私の言葉ではなかったりしたので、今回、本を書きました。

様々な取材を続けますが、自分の今回の経験を通じて出会ってきた人々の話を聞くと、「同じような経験をしたことがある」という方が多くいらっしゃいました。

ハリウッドの大物プロデューサーからのセクハラ、性的暴行の被害の訴えが広がったことを受け、現在世界中の女性が「#MeToo (私も似たような経験をしたことがある)」と声を上げている。こうした発信が、今後社会に広がって、性暴力について考えるきっかけになっていくんだと思います。

———-

元TBS記者は準強姦容疑で告訴されたが、東京地検は2016年7月、嫌疑不十分で不起訴処分(裁判にならない)とした。東京第六検察審査会は「不起訴相当」とする議決(捜査資料をもう一度精査したが、不起訴を覆す理由がないという判断)を公表し、元TBS記者は「一連の経過で犯罪行為を認定されたことは一度もなく、今回でこの案件は完全に終結した。一部報道などで名誉が著しく傷つけられ、法的措置も検討している」とした(2017年9月23日付朝日新聞)。

性の被害は長らく、深い沈黙の中に閉じ込められてきました。

セクハラ、レイプ、ナンパ。ちょっとした、”からかい”。オフィス、教室、家庭などで、苦しい思いをしても私たちは声を出せずにいました。

いま、世界中で「Me,too―私も傷ついた」という言葉とともに、被害者が声を上げ始める動きが生まれてきています。

ハフポスト日本版も「Break the Silence―声を上げよう」というプロジェクトを立ち上げ、こうした動きを記事で紹介するほか、みなさんの体験や思いを募集します。もちろん匿名でもかまいません。

一つ一つの声を、確かな変化につなげていきたい。

メールはこちら break@huffingtonpost.jp

『Black Box』(文藝春秋)定価1400円+税。全国の書店ほか、Amazonなどのネット書店で購入できる。

Source: ハフィントンポスト

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genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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