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「自分が嫌いだって、一度でも思った人は観て」。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」が公開

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映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」ポスター

高校に入学して初めての顔合わせ。クラスメイトが注目する中で最初のイベントといえば「自己紹介」だ。体中にじっとりとした汗をかき、息を詰まらせながら順番を待つ。

「あ、お、おっ、おっ、お……」

言えない。

「し、し、志乃……大島です」

映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の冒頭の場面だ。クラスが大爆笑するなか、彼女はうまくしゃべれないで立ち尽くしている。特に母音で始まる言葉が話しにくいのだ。

主人公の大島志乃は、原作の押見修造さんとイニシャルが同じ。なぜなら、押見さんが体験した名前の言えないつらさやコンプレックス、流ちょうに発音できない悔しさ、恥ずかしさ、そして「イタさ」をえぐるように描いた作品だからだ。

こうした症状は「吃音症」と呼ばれている。

これだけ描けば分かるだろ、分かれコノヤロー

7月14日の公開に先立ち、7月上旬に都内で特別試写会が開かれた。

試写会後に開かれたトークイベントでは、原作の押見さんのほか、「どもる体」の著者で東京工業大の伊藤亜紗准教授、吃音者のための学生サークル・東京大スタタリング代表の山田舜也さん、そして国立成育医療研究センターの医師で吃音外来も担当する富里周太さんが登壇した。

4人は全員、吃音当事者だ。

試写会では、自身も吃音に悩んでいるという男性から「押見先生の作品を読むと、同じような経験をしている自分はダメージを受ける。なぜあえて恥をかいた場面や『イタさ』をリアルに出しているのか」と質問が上がった。

中学生のころから「しゃべれない」状態が始まった押見さん。自己紹介が本気で苦手、授業中に先生に当てられても答えが分かるのにうまく話せなくてむずむずしたことや、悪気なく教員から言われた一言に「触れるな!」と思った経験などが、作品の随所に出てくる。

映画の原作を描いた押見修造さん

押見さんは「ずっとしまっていた。見て見ぬふりをして、隠していたことだった。それを赤裸々に描くことにした。(吃音ではない人に)『これだけ描けば分かるだろ、分かれコノヤロー!』って感じかな」と笑った。

続けて「描いているときは人に語っているような感じで、えぐられたりダメージを受けたりしない。描くことでスッキリした。楽になったし、この漫画を読んでくれていたら、自分がどもっても少し分かってくれるかもって保険が効いているような気持になれた。でも、確かに映画は自分が作ったわけではないので、観るとダメージ受けた。その気持ちは分かります」と答えた。

トークイベントで話題になったのは、志乃の担任の先生が、どもってしまう志乃に向かって向けた言葉だった。

「緊張しちゃうのはさ、まだみんなと打ち解けてないからだよ。頑張ろう、ね!」

教師から諭される志乃(右)

医師の富里さんは「名前が一番どもる。本人だって、どこでそうなるか分からない。いきなり出るんです。そういうときに『ゆっくり落ち着いて』『緊張しなければ大丈夫』などと言ってくる。なんなんだと。悪気はないのは分かるんですが」と話す。

吃音外来を受け持つ医師の富里周太さん

特効薬がないことに気が付く。でも「魔法はいらない」といえる気持ち

伊藤さんは「小学校のころから、連発したり、難発したりしていた。自分でも予測できないので、だんだんとゲーム感覚になって『次は何が起こるかな』と、どたん場感を楽しむようになった」という。

「どもる体」を書いた伊藤亜紗さん

だが同じ当事者でも山田さんは「恥ずかしいの連続。ゲームなんて思えなかった。吃音に伴う情動、不安、恥などが吃音を加速される感じがする。でも、『恥ずかしい』は消えない。消し去るのではなく、どもって生きていこう、と受け入れる。この自分のままでどうやって人を愛せるようになるのかと考える」と振り返った。

自身の経験について語る山田舜也さん

自分の名前が言えないことを恥ずかしく思っていた志乃は、最後に「恥ずかしいと思っているのは、全部私なんだ」という場面がある。そこから山田さんは「思春期は誰もが自己否定に陥る。ただ、この後に、志乃ちゃんがどうやって吃音と付き合っていくのか。今後どうなるのかが気になります」と話した。

富里さんは、作中で加代が作った「魔法」という歌について「歌詞の中に『魔法をください みんなと同じに喋れる魔法』っていうのがある。吃音外来では、特効薬はないか、吃音がなくなる魔法はないだろうかと思って来ている人たちが多い。特効薬はないし、魔法もない」という。

歌はその後に、「魔法はいらない」と続いていく。伊藤さんは「いらない、というのがすごい。吃音が治るのではなく、そのまま人生が続いていく。乗り越えるのではなく受け入れるということですね」と話した。

コンプレックスを描かせたら天下一品の押見さん

ただ、映画には「吃音」「どもり」という言葉は一切出てこない。

原作漫画のなかにも、そうした言葉を意図的に使うことはなかった。押見さんは「これをただの吃音漫画にしたくなかったから。これは自分の弱い部分、コンプレックスを抱えて生きるすべての人に当てはまるものだと思う。自分が嫌いだって、一度でも思った人は観てください」と話す。

映画は、歌が好きなのに音痴な加代、そして自己紹介ができなかった志乃につい吹き出してしまい、クラスの笑いの的にした「空気の読めない」菊池の3人を中心にして回っていく。

自分の持っている、周囲から見たら小さなコンプレックスが、自分の中からあふれ出して押しつぶされそうになる、10代特有の「あの感覚」がこれでもかと凝集されている作品だ。

押見さんは「コンプレックスからこぼれ出てくるものがあるんです。コンプレックスがあるほうが、表現者に向いている。それを形にすると、触れた人に『これは自分のものだ』と刺さりまくるから。吃音はその中でも、毎回フレッシュな恥ずかしさを感じられる得難い才能です」と語っている。

吃音症とは

声が出るはずなのに、言葉に詰まったり音が連続したりして滑らかに話すことができないことを指す。

主な症状は、「おおおおおおはよう」のように、音を繰り返しが起きる「連発」、「おーーはようございます」のような音の引き延ばしがある「伸発」、そして言葉が詰まってしまい、間が開く「難発、ブロック」というものがある。

これらの症状には、言いにくい言葉と言いやすい言葉とがあり、この作品にも出ているように、歌うときには症状が出にくいなどの特徴もある。また、いつ症状が出るかは分からず、調子の波もある。

言語の種類に関係なく、全人口の約1%で吃音の症状を持つ人がいるといわれており、幼少期に起きる発達性吃音と、ストレスや脳疾患などによって10代後半からみられる獲得性吃音とがあり、発達性吃音は7~8割が自然になくなっていく。

映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、7月14日から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。

Source: ハフィントンポスト

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著者紹介 著者一覧

genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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