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金融の役割再び -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-

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今回も「最近の雇用状況について -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」、「消費、技術革新、そして金融政策 -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」に引き続き、経済財政白書が取り上げたトピックスについて書きます。今回は金融についてです。

前回の「消費、技術革新、そして金融政策 -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」で、私は「投資による資本蓄積自体も労働生産性を上げ、また投資が技術革新を後押しすれば更に生産性が上がることで賃金は上がるでしょう。こうして賃金が上がれば消費が増え第二段階の景気回復効果」とも書きました。

白書では「第1章 緩やかな回復が続く日本経済の現状の第3節 財政金融政策の動向の1 長短金利操作付き量的・質的金融緩和と実体経済への波及」で

企業収益が回復する中、企業の設備投資は持ち直しており、設備投資向けの借入も増加している(p.72)

としていますが、最終的にはそのような資金が実際に投資支出に結びつかなければなりません。一方、続いて白書には

経済ショックへの備えや事業拡大のため、企業は手許流動性を確保しようとする傾向が強いとみられる(p.75)

ともあります。資金を使う予定がなければ、配当をもっと増やすなど株主に還元しても良さそうですので、設備の更新など将来の投資のために留保され、状況が良くなるまで先送りにされて待機しているということでしょう。

また、投資が起こらないのは需要が伸びないため企業が悲観的になっているからで、金利を下げても投資が起きないという人もいます。設備投資というと、工場増設など生産量を増やすことをイメージする人は多いと思いますが、実際には費用削減目的も多いはずです。

生産費用を下げることができれば、需要が伸びなくても利益は増やせますから、資金コストが十分下がればそのような投資は起こるはずです。費用削減というと資本代替による人員削減などが考えられますが、「雇用指標改善の真相」や「最近の雇用状況について -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」などで書いたように、現在は人口動態の変化による人手不足が顕著ですから、人員削減はあまり問題にはならなくなっています。

今より投資を増やすために必要なことは資金コストを下げることで、私は「消費、技術革新、そして金融政策 -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」で、「今より投資を増やすために必要なことは、資金コストを下げることで、それを可能にするのは中央銀行の金融政策」と書きました。また「雇用指標改善の真相」でも「金融政策は中央銀行がその時の実勢市場金利の下で、(予想実質)金利を上下に誘導するもの」と書いたように金融政策は金利誘導することです。しかし、白書の以下の図の「(4)実質金利(p.74)」から分かるように、異次元緩和は当初こそ実質金利をマイナス圏まで下げましたが、下げ幅も期間も不十分なものです。

そのため日銀は量的緩和や市場任せの物価上昇目標などに頼らない金利誘導を行う必要があります。(詳しくは「日銀の総括的検証から:日銀は期待に働きかけることはできたのか?」を参照。)しかし、白書には

今後、物価の安定的な上昇により、実質金利が押し下がっていくことで、さらに企業の投資意欲の醸成が期待される(p.75)

とありますが、私には何を根拠にこのように楽観的に言えるのか理解できません。

日銀はマイナス金利を導入しましたが、それはたったマイナス0.1%だけに留まったまま一年半が経過しましたが、それではとても十分ではありません。数%のマイナス金利を深掘ることは、まだ世界のどこも経験していません。しかし、日本は世界のどこよりも早く生産性の低迷に直面し、どこよりも長くゼロ金利政策を続けています。マイナス金利深堀りをやってみる価値はあるのではないでしょうか。

起業と技術革新、そして金融

前回の「消費、技術革新、そして金融政策 -平成29年度版「経済財政白書」を参考に-」で、白書が「第3章 技術革新への対応とその影響 第1節 技術革新が生産性に与える影響」で取り上げている技術革新にも注目しました。その中の「3 スタートアップ企業の成長力と生産性の企業間分布の動向」では、白書は技術革新と起業の問題を取り上げています。例えば、

起業家率(18歳から64歳までの人口に占める「新事業の立ち上げに関与した人」もしくは「新事業の経営者」の割合)を国際比較すると、日本は 2014年に4%と、アメリカ、オーストラリア、カナダの3分の1弱であるほか、28か国中最下位であり、起業活動自体も低調(p.157)

と指摘しています。

私もこの20年くらいの間、日本でもっと起業が増えることが必要ではないかと考えてきました。その理由として、高度経済成長期の技術革新はいわゆるキャッチ・アップ型であり、先進国で生まれた製品の改良や、それらの生産効率を上げることが多かったように思いますが、それらは大手企業の得意とするところだったでしょう。

しかし、先進国に追いつくとキャッチ・アップの余地は減り、技術革新にはより創造性、独創性が必要となります。そのような革新のアイデアはどこで生まれるか分からないものであり、もはや大企業だけに頼るわけにはいかなくなるでしょう。(もちろん、大規模な研究開発が必要な技術革新は依然大企業の役割は大きく、更には国の支援も必要かもしれません。)

また、経済が低成長になると、大企業新規事業のリスクはむしろ高まるでしょう。低成長により新規事業の成功確率が低下するだけでなく、新規事業に関わらず一つの部門の破綻を他の部門の利益で吸収仕切れなければ企業全体の経営を危うくさせるかもしれないからで、失うものが大きいからです。

このため大企業と新規の事業のリスクを切り離しておくには、起業によって新規事業を立ち上げるべきですが、それが他の先進国より少ないようなのです。

 続いて白書ではその理由として

OECD(2017)や内閣府(2015)によれば、①多くの人が起業をよいキャリアと考えないという心理的なもの、②複雑な起業制度及び③未上場企業に投資する 投資会社(ファンド)であるベンチャー・キャピタルによる資金供給が少ないこと(p.157)

と指摘していますが、私は自分の専門として以上の③(恐らく部分的に②も)の金融的な資金調達の問題を重視しています。白書には起業における資金調達の現状をそこの脚注13で

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(2016)によると、設立から現在までの資金調達元の 件数比率をみると、本人が87.0%、家族・親戚・知人が37.8%、銀行・信用金庫・信用組合が55.4%、ベン チャー・キャピタルが35.3%、公的機関が31.6%、個人投資家(エンジェル)が32.6%、民間企業が34.8%、海外 投資家が7.0%(p.157)

と書かれており、また

ベンチャー・キャピタルによる資金供給について、2015年時点の名目GDPに占めるベンチャー・キャピタル投資比率をみると、日本は調査対象国の中で17番目であるほか、 アメリカやイスラエルの6~7%程度(p.159)

と指摘しています。ベンチャー・キャピタルは、新興企業に投資するプロフェッショナルであり、比較的返済されやすい大企業への融資より金融マンとしての能力が問われるでしょう。

しかし、日本では結果としてそのような金融のプロフェッショナルな人材があまり育っていないのかもしれません。

ベンチャー・キャピタルによる資金供給が少ないことと関連することは、新興企業への資金供給形態です。日本は随分と昔から間接金融中心と言われていました。私は日本での「間接金融」は、銀行中心という意味であると捉えていますが、重要なことは銀行は様々な制約により融資中心であるという点です。

恐らく今でもそれが大きく変ったようには思えません。融資のような負債でない資金供給は、株式のようなエクイティ・ファイナンスです。

何故、そのような新興企業への資金供給が融資では問題があるかと言えば新興企業への投資は失敗の確率が高いからです。そのような場合にはリスク分散することが必要ですが、融資の場合には起業に成功してもそこから得られる資金供給者の利益は利息であり、それは通常限定的です。

例えば、起業した新興企業10社にそれぞれ金利10%で1億円融資したとします。そのうち1社が失敗して融資が全く返済されなければ、残りの全ての企業が利息まで返済しても埋め切れません。

株式で資金供給する場合、例えば1社が大成功を遂げ、株式市場に上場する際には投資額の5倍になったとすれば、10社のうち他の3、4社が失敗しても利益は出せます。

つまり、リスクのある新興企業へ融資するのは失敗する確率が高いにも関わらず、融資のような負債による資金供給では、成功報酬である利息には上限があるため少な過ぎると考えられます。

成功する企業が少ない場合では、多くの失敗をカバーできるほど成功した企業からの利益が大きくないといけないということです。

このように失敗してしまうリスクの高い新興企業への資金供給には、銀行のような基本的に融資するような金融機関ではなく、ベンチャー・キャピタルなどがエクイティ・ファイナンスする方が向いているということなのです。

もし起業する新興企業がエクイティ・ファイナンスする際、あるいはベンチャー・キャピタルのような投資家が株式などを引き受けることを妨げている規制などがあるなら、それらは速やかに撤廃されるべきでしょう。

Source: ハフィントンポスト

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genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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