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国立市や筑波大で「アウティング禁止」を明記。それでも残る課題を解決するために必要な2つのこと

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国立市で4月1日、全国で初めて「アウティング禁止」が盛り込まれた条例が施行された。また、3月には筑波大学がLGBTの対応ガイドラインを改訂。故意や悪意によるアウティングをハラスメントと明記した。

こうした取り組みは、アウティングによりLGBTが居場所を奪われたり、プライバシーを侵害される危険から身を守ることができる点で画期的と言える。

しかし、この条例を運用するにあたっては、注意すべきポイントが2つあるようにも思う。ひとつは、緊急事態など例外的な場面の想定の必要性。もうひとつは、「アウティング」による危険性そのものをなくそうという方向性。目指すべきは多様な性が「承認」された平等な社会であることを再確認したい。

法律や制度によってアウティングを禁止することは、果たしてどういった効果・影響があるのだろうか。

国立市WEBサイト/筑波大学「LGBT等に関する筑波大学の基本理念と対応ガイドライン」より

■アウティングとは「同意なしに第三者に暴露すること」

そもそもアウティングとは、本人の性的指向や性自認を、本人の同意なしに第三者へ暴露してしまうことだ。

以前、私は「アウティングって何?」というアウティングに関する一枚の解説図を作成した。

アウティングに関するポイントは以下の4つ

  1. そもそもアウティングとは? アウティングとは「本人の承諾なく、その人のセクシュアリティを第三者に暴露してしまうこと」です。
  2. なぜアウティングをしてはいけないの? その人の居場所を奪ってしまったり、プライバシーの侵害につながる可能性があるから。
  3. カミングアウトされたらどうすればいい? 肯定的に受け止め、「誰に伝えているのか」「誰に伝えて良いのか」を聞いてみてください。
  4. 困ったときは自分だけで抱え込まず、相談しましょう。

■国立市の条例、筑波大のガイドラインで「アウティング禁止」

国立市で施行された条例は「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」その第8条2項「何人も、性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も、強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない」という部分でアウティングの禁止が記載されている。

アウティング禁止が盛り込まれた背景には、一橋大学でゲイの大学院生がアウティングを理由に自死してしまった事件がある。

国立市の吉田徳史市長室長は「カミングアウトをしたら守られます、というように骨子案の中身がカミングアウトを前提にしたものになっているのではないか」というパブリックコメントがきっかけとなり、議論が始まったとインタビューで話している。

条例の中のアウティングに関するポイントは以下の3点。

  1. カミングアウトの自由が「個人の権利として保証される」。
  2. アウティングの禁止に加えて、カミングアウトを強制することも、カミングアウトをさせないようにすることも禁止。
  3. 条例では罰則規定はないため、アウティングが罪に問われる訳ではない。しかし、苦情処理の仕組みを設けており、市が適切な措置を講ずるとしている。

筑波大学「LGBT等に関する筑波大学の基本理念と対応ガイドライン」より

筑波大学で改訂されたガイドラインには、カミングアウトが「当事者の自己決定に属することを踏まえ、情報のコントロールに留意する必要がある」とした上で「(アウティングは)当事者に精神的苦痛を与えます。故意や悪意によるアウティングに対しては、本学はハラスメントとして対処します」と明記している。

■アウティングを禁止でも残る課題を解決する

まだまだLGBT等への差別や偏見が残り、さまざまな性的指向や性自認のあり方に対する認識が広がっているとは言えない現状で、セクシュアリティを勝手に暴露されてしまうことは、圧倒的多くの場合、当事者の居場所を奪ってしまうことに繋がる恐れがある。

学校でのいじめや、家族からの勘当、職場に居づらくなる等に発展し、最悪の場合、自死に至ってしまうケースもあるのだ。

アウティングの中には、善意で伝えてしまった場合もあるだろう。しかし、勝手に伝えた相手に理解があるかどうか定かではない中、アウティングはやはり危険性が高い行為だ。

こうした社会の現状の中、国立市の条例や筑波大学のガイドラインは意義のあることだと私は考える。法律や制度によってアウティングを禁じることで、当事者は危険から身を守ることができるし、社会に対して「アウティングはいけないことだ」というメッセージを広げることができる。アウティングを未然に防止する効果もあるだろう。

しかし、同時にアウティング禁止にあたっては、緊急事態など例外的な場面の想定が必要になるのではないかと思う。

実際に私が学校現場で伺ったことのあるケースでは、生徒が養護教諭にカミングアウトし悩みを相談するも、養護教諭が対応できず、他の教職員にも相談できなかったという事例がある。結果的に生徒は自殺念慮を抱くほどだったため、チームでの緊急介入が必要だったが、名前を出さず個人情報に注意しながら他の教職員に相談したとしても、学校という狭い環境の中、それによってセクシュアリティがバレないという保証は難しいだろう。

「誰にどういう理由で共有するか」を本人にしっかり説明し、本人の同意が得られればアウティングにならないが、差別や偏見を恐れる生徒自身が、意を決して何とか養護教諭にカミングアウトしたその直後に、他の教職員へのセクシュアリティの伝達をそう簡単に承諾できるかと言えば、それは難しいように思う。

このように、現場のカミングアウトとアウティングをめぐる課題は繊細かつ複雑な事例も少なくない。

ただ、制度としてのアウティングを禁止するにあたって生じる課題への対応は、筑波大学の事例は参考になるだろう。

■実態に照らしたアプローチと、目指すべき社会のあり方

原則アウティングは禁止でありつつも、今挙げたような「緊急性」がある場合や、専門機関の相談などにおいては例外であるという解釈を、運用にあたって定めればよいのではないか。

筑波大学のガイドラインでも、当事者に対しても、カミングアウトを受けた側に対しても「守秘義務のある相談窓口に相談できる」ことを明記していることは非常に重要だと思う。国立市の条例も、このような解釈を定めて通知するのはどうだろうか。

その他にも、例えば24時間の電話相談窓口「よりそいホットライン」では、4番がセクシュアルマイノリティ専用の相談窓口になっている。「アウティング」を理解しているからこそ悩みを抱え込んでしまう場合に備え、こういった電話相談の利用を事前に周知しておくことも一つの方法だ。

さらに、特にメディアに対しては「アウティングを禁止する」条例が施行されるにあたって、今こそ”本来目指すべき方向性”、すなわちSOGIに関する差別や偏見が「アウティング」という状況を生じさせている、というそもそもの前提を見失わないための情報発信も必要になってくるのではと思う。

もし、LGBTの存在があたり前に身近に感じられていて、例えばセクシュアリティが自己紹介でいう「星座」や「好きな食べ物」などと同じくらい”言っても言わなくてもどっちでも良いようなもの”になっていれば、アウティング自体が危険なものではなくなる。概念すらなくなるかもしれない。(もちろん、それにはまだまだ長い道のりがあるため、さまざまな手法で取り組みが必要であることは忘れてはならない)

国立市では「性の多様性を認め合い、ありのままで地域で暮らす社会を実現するため、この条例が土台になれば」と話しているように、実態に照らした対応として「アウティングの禁止」が求められる時こそ、大元である差別や偏見の構造を変えていくことを忘れてはならないと思う。

アウティングによって被害者も加害者も生まないよう、国立市の条例や筑波大学のガイドライン等で「アウティングの禁止」と、それに連なる細やかな規則やサポート体制を整えること。そして、セクシュアリティの公表が何のメリットもデメリットもなくなるよう、フラットな社会を目指していきたい。

Source: ハフィントンポスト

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著者紹介 著者一覧

genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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