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「日本は、義理チョコをやめよう」 働く女性の気持ちを掴む広告は、こうして生まれた。

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2018年のバレンタインデー。私は社会人7年目にしてはじめて、職場の男性社員にチョコレートを贈らなかった。きっかけは2月1日、日経新聞に載ったGODIVAの新聞広告だった。

「義理チョコはなくてもいい。いや、この時代、ないほうがいい」

そう記された意見広告は、ネットで大きな物議を醸し、テレビや海外メディアでも報じられた。

広告を手がけたのは、クリエイティブディレクターの原野守弘さん。

実はこの作り手、「この国は、女性にとって発展途上国だ。」というキャッチコピーで論争を呼んだ化粧品会社・POLAの広告を仕掛けた人でもある。

GODIVAとPOLAの広告。共通しているのは、いずれも「この国の女性」が主役だということだ。

海外で数々の広告賞を受賞してきた男性クリエイターが、この国で働く女性の気持ちを理解し、代弁する。そこにはどんな「まなざし」があるのだろうか。話を聞きにいった。

株式会社「もり」代表の原野守弘さん

バレンタインで「日本の会社のあり方」を問う。

《義理チョコをやめようと提案するGODIVAの広告は「(バレンタインのプレッシャーは)この国の女性たちをずっと見てきた私たちゴディバも、肌で感じてきた」「男性のみなさんから、(中略)彼女たちにまず一言、言ってあげてください。『義理チョコ、ムリしないで』と」などと呼びかけた。この呼びかけにはどんな背景があったのか。》

バレンタインの定番ともいえる会社が「義理チョコをやめよう」だなんて、まさかクライアントが本当に採用するとは…。

今でもそんな風に思ってしまうくらい大胆な提案ですよね。でも、一番最初に相談をいただいた時から、この案が通れば、バレンタイン商戦の話題は独占できるだろうと思っていました。だって日本のバレンタインっておかしな日なんです。

僕もかつてはサラリーマンでしたが「本当に理不尽なイベントだな」とずっと思っていました。楽しんでいる人はいい。でも新人や派遣の女性社員が右往左往している姿は、やっぱりちょっと違う。

それに、過去の販売データを見ると、バレンタインが休日の年は、売り上げが大幅に下がっていたんです。「会社が休みだとチョコレートを贈らずに済む」という女性の本音が聞こえてきそうです。

バレンタインデー商戦真っ只中のデパートのスイーツ売り場(2016年2月9日撮影)

「やっぱりどこかでみんな、違和感を感じているんじゃないか?」ーーその仮説を消費者に問いたいと思いました。

それだけではありません。

バレンタインの意義の問い直しは、日本の会社の中にある様々な抑圧への問題提起でもありました。「みんながあげているから、私もあげないと…」という同調圧力もそう。

だからこの広告は、チョコレートを贈る女性ではなく、チョコレートを贈られる男性に呼びかける形にしたんです。

残念ながら今の日本企業だと、男性の方が権力や実行力を持っていることが多いじゃないですか。

同調圧力みたいな会社にはびこる色んな不合理さを解決するために、アクションを起こすべきなのは男性ではないか。そう思っていました。

しっかり伝わった人、何となく伝わった人、グラデーションはあると思いますが、話題になったという結果が意味することを考えたいですね。

「この国は、女性にとって発展途上国だ。」

《コピー機の前でうずくまる女性、男性社員にお酌する女性、ショーウィンドウに映った自分を見てため息をつくリクルートスーツを着た女性…。原野さんはPOLAの広告に、日本社会で働く女性の「ありのまま」を描いた。》

この企画の出発点には、作り手である僕の個人的なジェンダー意識がありました。

広告を作るときって、作り手が社会を「どう見ているか」という”見立て”が重要なんですね。僕の中には数年前から「今の日本はジェンダーイクオリティの観点でかなり遅れている」という見立てがありました。

実際、男女格差を示すジェンダーギャップ指数は世界144カ国中114位と、恥ずべき状況です。

カンヌ広告祭などの海外の広告賞に参加すると、世界はどんどん進んでいることを痛感し、日本はどうなのか、という危機意識が生まれていたんですね。

そこに合致したのがPOLAの案件でした。

広告の究極的な使命って、今よりちょっといい未来を見せることなんです。POLAの広告を通じて、今より女性差別が少ない社会を少しでも予感させることができたら…。

「今、この国で働く女性のリアルをどう思いますか?」ーー 勇気を持って問いかければ、多くの人に共感してもらえるだろうという読みはありました。

POLA・ビューティーディレクターの採用広告第2弾CMより

POLA・ビューティーディレクターの採用広告第2弾CMより

世間の皆さんからは「女性の共感を呼ぶ素晴らしい広告だ」と言っていただくことが多いですが、この広告で語りかけたかったのは実は女性だけではありません。

女性、男性を含む、すべての人に問いたかった。女性も男性もいて、社会。男性だって葛藤していますしね。

炎上する広告と何が違う?

《GODIVAやPOLAのストレートな投げかけに、ネット上では「我こそは何か言いたい」という人の感想が溢れた。ジェンダーをめぐる広告表現はときに炎上し、企業側が削除することもある。リスクをコントロールし、絶妙な賛否両論を起こす鍵は何だろうか。》

メッセージを発信する時には「どうすれば共感されるか?」をいつも考えています。 

大事なのは「正直さ」と「勇敢さ」なんですよね。

正直さというのは、お客さんをバカにしないで誠実に、言いたいことを言うということ。

広告って本当に「嘘」が多い。非現実的なかっこよさを演出したり、過度に誇張されることもしばしばです。ありえないロマンチックな状況で愛の告白をするバレンタイン広告を見せられてもね…。それでお客さんが釣れると思っている時点で、バカにしていますよね。

企業だって極論、人間と同じです。愛されたり、尊敬されたりするには、正直でいないと。

それから、メッセージを言い切る「勇敢さ」も大事です。

主張するにはリスクも伴う。企業が意見を表明すれば、今の時代、ソーシャルメディアなどで必ず一定数のアンチが出てきます。それを覚悟の上で、声をあげられるか。

スウェーデンの車メーカー「VOLVO」が1990年に「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生みだしています。」という新聞広告を出したことがありました。これも、正直さと勇敢さを持った企業が、社会にメッセージを投じたいい例だと思います。

「ちょっといい未来」にするために。

《ジェンダーへの理解や関心の高まり、社会システムの変化を加速させるために、私たちに何ができるだろうか。》

ジェンダーの話になると、耳を塞いでしまう男性、あるいは女性がたくさんいます。変化って怖かったり、面倒だったりもする。

でも、世の中の新しい動きがあるからこそ生まれるモノもあります。

2007年に、タカラトミーの「リカちゃん」の40周年キャンペーンを手がけました。

1967年生まれのリカちゃん人形は、完全に”家事労働シミュレーション”のおもちゃだった。女の子は、結婚して育児をして幸せになるという古い価値観を前提としていたんです。

でも、それって今は何かモヤっとしますよね。

僕はリカちゃんに家事をやめさせて、世界中を旅行してどんどん自立していく「ワールドツアーシリーズ」という商品を企画しました。タカラトミーも、僕の見立てにほぼ同意してくれて、企画は実現しました。

リカちゃん ワールドツアーシリーズ (2007年4月10日撮影)

社会を変える方法は一つじゃありません。

ひとことにジェンダーとかダイバーシティと言っても、「人権問題」として捉えるだけではなく、「新たなチャンスだ!」という考え方もあります。

例えばメディアも、優等生的に報じるだけではなく、ジェンダーの問題とビジネスをうまく結びつけて、お金儲けした人の話を取り上げてみるのはどうでしょうか。得する話は、みんな聞きたいですよね(笑)。

安易に「男VS女」にしない。

世の中に新しい問題があることって、悲観すべきことではないんです。問題があるということは、解決のチャンスがあるということですから。解決すれば、人はその変化を楽しいものだと感じることができるはず。

少なくとも僕は、そう信じて、今日も広告を作っています。

■原野 守弘(はらの・もりひろ)さんプロフィール

「株式会社 もり」代表、クリエイティブディレクター。 電通、ドリル、PARTYを経て、2012年11月、株式会社もりを設立、代表に就任。 経営戦略や事業戦略の立案から、製品開発、プロダクトデザイン、メディア企画、広告のクリエイティブディレクションまで、広範囲な分野に携わる。 カンヌ国際広告祭 金賞、TED: Ads Worth Spreading、広告電通賞 最優秀賞、グッドデザイン賞 金賞など、国内外で多数の受賞実績を持つ。 代表的な仕事に、「NTT Docomo: 森の木琴」「Honda. Great Journey.」「Polaリクルートフォーラム」「日本は、義理チョコをやめよう。Godiva」など。

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Source: ハフィントンポスト

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genki

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 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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