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衣を自給自足する生き方。日本古来のワタと「本当のコスト」とは

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私達の服の材料、ワタ。コットンと表記されるこの植物にはふたつの漢字があります。

「棉」は植物としての状態のワタ。収穫された種つきの状態までのことを示します。棉から種をとって繊維にしたワタからを糸へんの「綿」と書きます。繊維のワタは白くてふわふわであたたかい。それを糸にして布にして縫製して、服になります。今は数百円でTシャツが買える時代ですが、Tシャツ1枚作るために、どれくらいのワタが必要か、考えたことがありますか?

日本の風土に適した「和棉」を育て、衣の自給自足を再考する場を提供している鴨川和棉農園田畑さんと、オーガニックコットンの専門ブランドで、いっしょにプロジェクトをしていたメイド・イン・アースの前田さんに、ワタの魅力を伺い、みえてきたもの。それは「ワタのきもちよさ」でした。そこから感じたのは「意識していなかった衣の本当のコスト」

衣を自給するということ

−和棉の農園って初めて来ました。ふだんはどんな活動をしているんですか?

田畑:日本の古来の綿の種である和棉を残すため、種まきの春と、収穫の秋にワークショップをしています。

—どんな方々がワークショップに来るんですか?

田畑:大学の先生と生徒さんが来たり。あと、棉は俳句の季語になっているので、俳句の会の人からの依頼があったりしますね。

−季語ときくと、和棉は日本の古来のものなんだなと実感します。2013年に亡くなられた田畑健さんがこの農園を始められてから、どれぐらいの数の人が参加されてきたんでしょう?

田畑:20年ぐらいやってきて千何百人ですかね。

—すごい。

前田:ひとつひとつ自給自足・手紡ぎして手織りして、とにかく自分たちで栽培技術や作る技術を身に着けよう、それを広めよう、と。

田畑:そうそう。主人がよく言ってたのは、「人数じゃない。たった一人でもいいから、本当に分かってくれる人、本当にやりたい人がいれば、それで物事が変わってくんだ」って言ってました。

−なるほど。本当に全部に無駄がないそういう生活を目指していたということですね。衣の自給を提唱するためにずっと活動を続けてきて、以前取り組まれていた、メイド・イン・アースとの和綿マフラーという取り組み以外に、具体的に取り組まれている自給のことって何かありますか?

田畑:自給のこと。そうですね。今着ている服は、娘に織ってもらったものです。

—ちょっと触ってみてもいいですか?柔らかい!し、あたたかい。植物性のものなのに、なんか体温を感じるというか。

田畑:よく言われますよ。なんかメイド・イン・アースの和棉マフラー買った人からも、すっごいあったかいんですけどって。今までウールのマフラー持ってたけど、それよりずっとあったかいって言われて。

前田:あったかいですよね。これは完全に手紡ぎ手織り。手で作っている。どうしても機械を使ってやるとなると、加工が必要になってきてしまうので、ここまで柔らかさは残りません。だからメイド・イン・アースではワタ本来の風合いを残すよう、肌の弱い方にも安心して使っていただけるよう、化学加工を施さない。うちはそれを目指してるんです。だけども、まず糸からして手紡ぎでふっくらとしたふくよかな糸と、工業製品としてつくった細いピシっとした糸だと、用途や触り心地に差がありますよね。

−そうなんですね…。触ってみて、その違いを初めて体感しました。

オーガニックコットンの定義

—魅力的なやわらかさとあたたかさをもつ和綿ですが、栽培に取り組む人はどんどん増えてきているんでしょうか?

前田:増えてきてはいますよね。特に震災以降増えてきてる感じがします。ただそもそも園芸ショップで売ってる種は和棉じゃなくてアメリカ原種の綿。

−なるほど…。和綿もアメリカ原種の綿も含めて、オーガニックコットンって、今ここ数年でより聞くようになったんですけど、オーガニックコットンの定義ってあるんですか?

前田:あります。オーガニックコットンの定義は有機野菜と同じ。3年以上、化学的な農薬とか化学肥料を使ってない畑で有機肥料だけで育てる。

−育て方は、やっぱり有機野菜と同じような育て方です?

田畑:うちの場合は、有機肥料として、鶏糞を使ったりしますね。

前田:オーガニックコットンの場合、基本的に無農薬や自然由来の肥料を使ってますね。

種も和綿は、市販されていないことが多いから、みんな自家で採った種を次の年に蒔くんです。

−そのお話からも和綿に手間がかかることが伝わります。

田畑:そうですね。でも、2000年頃から和綿づくりを手がけて、まだ17、18回しか作れていないんですよね。

前田:それ、逆に言うと、あと、数えるほどの回しかできないんだって思います。あと10回やったら、20回やったらって、もう生きてるかどうか分からないぐらいの年になってしまう。

—1年に1回の収穫という作物だとそういうかたちになりますよね…。

衣のトゥルーコストについて

前田:田畑健さんがよく言ってたのが、衣食住という単語は「衣」が一番最初に来るっていうこと。人間と動物の違いは「食べるし、巣を作る。しかし服は着ない」という点だから、衣が一番大切で最初にあるんだっていうことね。食に関する自給ってわりとみんなやるけれども、衣の自給はなかなかいない。

−目からうろこでした。ファストファッションが身近にある中で、こんな考え方があったのかって。

前田:「ファストファッションの本当のコストはどれくらいか、考えたことありますか?」と問いかけるドキュメンタリー映画があります。1枚1000円のワンピースがあるとする。その背景には、劣悪な環境の中で働いてる方、賃金も安かったり健康被害がある方が関わっている。

—今、お話を伺っただけで、重い気持ちになりました…。

前田:分かりやすい例としては、鴨川和棉さんとメイド・イン・アースで和綿マフラーを作るっていう事は、一般的なものよりどうしても高額になってしまうのですが、それはトゥルーコストなわけです。僕らは綿で仕事をしているわけだから、日本での手紡ぎ・手織り、あと卸すというコストを換算してくと、そういう価格になってしまいます。

−でも、それが正しいコストですよね。

前田:でもその値段にすると結局成り立たなくなってしまう。それを「高い」という人は、この材料である綿を1から作って紡いで織ったらどれくらいかかるものなのかっていうことを考えない。でも畑で綿を育てて紡いで織って、1本のマフラーできましたと見せられたら、その価格が高いか安いか、分かってもらえると思うんです。

−ちなみにこれぐらいの量でおいくらぐらいになるんでしょう?

田畑:種付綿で100グラム900円ですね。

−それってトゥルーコストなんですか?

田畑:時給600円ぐらいだから、最低賃金より下ですよね。

−そうなんですね…。今、着ているそれを作るためには、どれぐらいの量を紡がないといけないんでしょうか?

田畑:これ、袖がないので300グラムくらいです。

前田:ワタは、繊維の部分がとても軽くて100キログラム取れても繊維は3割ぐらい。あとの7割は種の重さなんです。

田畑:だから300グラムの服を作るためには約1キログラムの種付き綿がいるんですよ。

−そう考える度、服って本来軽々しく買えるものではないのかも、と思えてきますね。

道具も自給する

−これがマハトマ・ガンジーが使っていたという糸つむぎの道具、チャルカなんですね!

前田:そう。これすごいですよ。いわゆる糸車は、こんな簡単な仕組みなんですよ。

田畑:インドから買っているんだけど、そのままだと使えないから整備してましたね。

−道具から手を入れるっていうのは、本当に自給の生き方ですよね。

前田:田畑さんは昔の道具を、見付けてきて手直しして。なおかつ、ここで独自に作っちゃった方なんです。でもね、昔の良さをちゃんとリスペクトしながら、昔はこうだったからこうだったんじゃないのかって、仮説を立てて、自分なりに改良されて。本当に職人さんみたいな研究者みたいなところありましたね。自分でちゃんと体験したり、実行する方だったなぁ。

田畑:織り手に関しても、女の人が多いんだけど、全然筋が通ってないのに先生にそう言われたからやるみたいな無駄な過程が多かったりするんですよ。そういうのを排除して、誰でもできるようにするっていうのに取り組んでたましたね。

和棉をのこすということ

−2013年に亡くなられたご主人である田畑健さんの遺志を引き継いで、活動を続けて。美智子さんが、綿にたどり着くまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。

田畑:私は肌の疾患持ちで、小さい頃から母に着せてもらったものは全部綿だったんです。あとね、服がすごく好きだったんです。学校サボってブランドのセールに行ったりとか(笑)。だから、就職の時に「バイヤーしたい」と、大手セレクトショップに入社しました。

−ファッション業界出身だったんですか!

田畑:ちょうどその頃すごいリベラルな方と知り合って、週刊金曜日っていう雑誌買ってたりするような、ね。その人にすごく影響を受けて、自分の職場に疑問を持ち始めたんです。職場ではゴミが毎日いっぱい出る。セールでも売れない服が大量にある。これっておかしいなと思って、もっと自然なかたちでいいものができないかなって。そんな時にピープルツリーっていうフェアトレードのお店で、鴨川和棉のワークショップのチラシを見つけたんです。もうそれが本当、運命で。もう一瞬でも早くこのチラシを取らなきゃいけないみたいな。

−そんなにビビっときたんですね。

田畑:うん。で、参加したんですけど、もう頭真っ白になるような、すごい衝撃受けましたね。自分のいる世界と全然違う。自給自足に自然農。聞いたことがないことをたくさん聞いて、その感動を帰ってから手紙に書いたんです。そしたら、一週間ぐらいして電話が来て「ワタの種まき手伝わないか」って言われて、「是非!」って再訪したのがキッカケです。

−そんな出会いだったんですね…。今後は、どうしていきたいか展望を教えてください。

田畑:そうですね。和棉は絶滅させちゃいけないと思っているので、主人のやり方を続けることで和棉を守りたいです。

−前田さんはそれを受けてどうですか。

前田:私は前から取り組んでいる和綿プロジェクトの一環で綿をやりたいって方に自分たちの栽培風景とか栽培状況をFacebookの中で、情報共有するプラットフォームを作りたいなと考えています。

−プラットフォームですか。

前田:個人だったら自宅で鉢やプランターで家族で一緒に育てて、「みんなが着ている洋服はコットンはこういう植物で育てられるんだよ」ってもっと綿に親しんで知ってもらおうというもの。大規模な方だと、広く綿を栽培してたくさん採れたから何か作ってみたいという人には一緒にものづくりしませんかっていうようなプロジェクトです。今はまだ全部和綿でまかなってものづくりは難しいけれど、できれば2020年に、和綿100%のものを作りたいなと。それを思い描きながら、人を、どんどんつなげていけたらいいなと思っています。

−2020年がたのしみです。ありがとうございました。

Source: ハフィントンポスト

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著者紹介 著者一覧

genki

genki

 小学校元教諭。6年間、教壇に立つが日々追われる実務、長引く会議、閉塞的な職場に、次第に心が疲弊していく。やがてブラックな職場で自殺願望すら生まれ、このままでは死ぬ前に後悔する人生になってしまうと思い退職を決意。小学校の先生を辞め、自力で稼ぐと決断する。
 そして、幸運な事にビジネスの権威と出会う機会に恵まれ、直接指導を受ける機会を得る。この決断がたった1つの奇跡的な出会いを引き寄せ、その後は師に教わったビジネスノウハウをひたすら実行し続け会社の発展に至る。
 会社設立から3年後、デンマークで最高峰の働き方が実施されている企業を現地視察。管理職、社員が共に幸せになれる8つのエッセンスを欧州より持ち帰り、自身の会社を通して日本中に広めようと奮闘中。
 埼玉県さいたま市出身。既婚。早く子供が欲しく妊活真っ最中の1983年5月生まれ。趣味は空手、柔術、ウクレレ、食べること、バターコーヒー。好きな言葉は下座達観。

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